やってきたのは『臨時休業』と貼ってある喫茶店でした。
流石に誰もいません
学生さんはカウンターテーブルに座っている若いお兄さんと
テーブルを綺麗に拭いている若いお姉さんに
「ただいま」といいました。
ここは学生さんの家のようです。


「父さん母さん!見つけたよ!すぐに『誰』か占ってみて!俺、仲間(皆)に連絡入れてくる!!」

お母さん?
どうみても、20代後半の方にしか思えませんが…?

「こんにちは。こっちへ座ってもらえるかしら?」

さきほどまで拭いていたテーブル。
若いお姉さんはお兄さんから渡された高そうな水晶を受け取りました。
どうやら、カウンターの中においてあったようです。

割れそうですね。おき場所が・・・

言われるがまま、席に着きました。

「銃刀違反者に追いかけられたの?顔に変な刺青がしてある人」

「はい。あの、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

「なんでしょう?」

コトっと、テーブルの上にカプチーノが置かれました。

「どうぞ。御代は結構です」

若いお兄さんが持ってきたようです。
ペコリとお辞儀をして続けました。

「親子、なんでしょうか?あの学生さんと…」



若いお兄さんが

「修一の父、佐鳥珊瑚です」

若いお姉さんが

「同じく母で、この人の妻、佐鳥千郷です」
















「リファーナ、誰かわかったか?」

奥のドア、多分生活空間なのでしょう
先ほどの学生さん・・・修一さんが私服に着替えて戻ってきました。

「ロゼット、急かさないで。今からよ」

千郷さんが水晶に目をやると、珊瑚さんが修一さんに声をかけました。

「それより、仲間は来るっていったのか?」

「ああ3人、すぐに来るってな。仕事があれば多少食い違うが・・・」

修一さんはこちらが飲んでいるカプチーノに目を留めて

「ベン、俺もカプチーノくれないか?」

「ああ、いいよ」

珊瑚さんはめんどくさそうにカプチーノを注ぎに行きました。
その入れ替わりに、修一さんが千郷さんの隣にやってきます。


ええっと・・・・・・
どうしても、親子の会話とは思えないんですけど


「あ、あのぉ・・・」

「なんだ?」

「名前、どうしてカタカナ系なんですか?あと、会話が・・・」

「説明するのめんどいから自分で思い出して来い」

修一さんは取り付く島がありませんでした
薄情です

「せめてヒントを」

「リファーナは高名な占い師だ。受け継がれている者が『誰』なのか思い出せる」

「占い師?」

「勿論、向こうの・・・世界で、だ」

「・・・・・・」


今、逃げ出したら駄目ですか?

駄目ですよね・・・空気が許してくれてません


せめて、せめて殴られそうになった原因や
勝手に燃え出した人や
助けてくれた意味なんかを教えていただけたら

もぉ少し、違った気分になれたとおもうんですけど



「さ、この水晶をじっと見て・・・」


千郷さんに促されました。


なるように、なれ、です









ざっと、説明すると

今流れ込んだ知識や術は追放される前の『エルス』という世界のものです。
そこでは聖獣と呼ばれる獣が自然を統治しています。
地図に描かれている大陸はたった一つ
『バルコ』と呼ばれる広い自然豊かな大陸です。
社会もあります。
王族。と呼ばれている上級階級が国を統治して、大きな大陸は一つの国家でまとまっています。
そのほかの人は、部族として点々と分かれていますが、規模はどれも小さいです。

彼ら、そう・・・思い出させてくれた方々は

『リファーナ=レイジャー』
高名な占い師で四聖獣の一人、風(ファルコン)を守護に持つ国お抱えの占い師

『ロゼット=エルニクス』
前国王ライブスの忠実なる親衛隊長で、四聖獣ユニコーンを従えている唯一の剣士

『ベンリック=ボルト』
王族に属する武器鍛錬師。世界で三人しか作れない『剣』を作製出来る一人


彼らは新王にて追放されし反逆者

新王の策略にて抹消された王を助けるべく動いた忠実なる家臣

『魔女』によって敗北し、殺害された後
知識と記憶、使命を彼方へと追いやったのです。
彼方とは、ここ、日本。

そして、新王は彼らが転生し、また己を脅かすのではないかと恐れ
術者を用いて彼方まで暗殺者を送り込み

覚醒前に、滅する


それが、さきほど逢った奴隷戦士です。




ため息が出ました。

「なぁ、リファーナ。こいつは誰だ?ワックスか?それとも」

千郷さんは水晶を見ながら、重いため息を吐きました。

その理由がよぉぉぉぉっく解ります。











だって、彼らを殺した『魔女』とは







私でしたから







次ページへつづく☆