初めてみる景色なのに、ここがどの場所が見知っているなんて
少し不思議です

ただいま、ユニコーンを封印している神殿の近くにいます。
竜司さんは『術者』の方で、あちらとこちらを行き来できる扉を作ってくれます。

やり方を見せてもらいましたが、私にも簡単に扉が作れそうです。

あと、気づいたことですけど
地球の、強いて言えば修一さん宅から半径50キロと『エルス』の世界は
とてもつながり易いみたいです。
多分、その為に、あの地域で産まれた方が
このような知識を伝承してしまったのではないかと思います。

「おい、魔女」

修一さんに呼ばれました。
考え事を止めて振り返ると

喉元に氷器がありました。

「妙な真似したら、切殺す」

「・・・・・・」

冗談には・・・到底思えませんでした。













今より少し遡って

仲間かと思って助けてのに実は自分を殺した相手だとわかり
修一さんは怒髪天のように怒りました。

「冗談じゃない!!よりによって魔女を助けたんじゃ、シャレにもならねーよ!!
第一、なんでおまえがこっちに居るんだ!?ふざけんな!!
敵に塩を送るってまさにこのことじゃねぇか!!
もういっぺん奴らに会って今度こそ殺されて来い!この冷徹非道魔女!
俺は絶対におまえがしたこと、許さねーからな!!」

「・・・はぁ・・・」

正直、今の私とは何の関係もなかったのですが
不運というか、記憶があるので頷くしかありませんでした。

それを止めてくれたのが、彼のご両親さんとやってきた三人の仲間の方でした。


「まぁまぁ。そんなに怒るなって」

『バーストロット=マギー』
前王の親衛副隊長で、術者と呼ばれる魔法使いの一人。ロゼットとは大の親友です。

今回も親友のようです。
お名前は日溜竜司さん

「これが怒るにいられるか!おまえら全員、魔女にブッ殺されたんだぞ!」

ええ、その通りです、殺しました。
その記憶も知識として残っています。
捨てたいですね、はい。

「でも、彼女とは直接関係ないんですよ〜?」

『チョック=ディジェント』
前王の侍女を務めていた治療魔術師で、前王の幼馴染。后に選ばれていた方です。
お名前は芳野友恵さん


「確かに八つ裂きにしたいが、仕方ねぇだろ?」

『レジョンジー=ヴァドス』
親衛隊に傭兵として雇われ、そのまま居ついた方。豪腕戦士とも言われたほどの凄腕の方です
お名前は祭隆正

「修一、いい加減にしなさい」

千郷さんです。こうしてみると母親という感じがします。

「彼女は魔女だけど、それは過去の事よ。現在と過去をごっちゃにしない!失礼でしょ?」

「ロゼットが一番全部見てきてるのは知ってる。だがな。彼女とは関係ないと思うぞ」

珊瑚さんはベンリックのまま言ったようです。

ダン!と修一さんがテーブルを叩きました。
それからちょっとして息を吐きます。

「解った」

そう一言だけ言って、私を睨み付けました。

「なら、魔女がやった『ユニコーンの封印』をとくから、協力しろよ!」

「・・・異存ないです」

と、言っておきました。
でないと、本当に修一さんに亡き者にされてしまいそうです。






「さぁ、魔女を脅してないで、ユニコーン封印攻略第5回目開始しましょう!」

友恵さんが一人元気よく声を上げて、慌てた竜司さんに口をふさがれてしまいました。

「しー!しー!!奴隷戦士に気づかれる」

「ああ、ごめん」

「何度も行っても、頂上にいけないな・・・」

「今日こそは行くぞ」

みなさん、意を決して進んでいきます。
私も黙って進みますが、途中で道を変えました。
茂みの中から握りこぶしほどの緑色きのこを発見します。

「どこへいく?」

修一さんが冷たく聞いてきます。

「え?ユニコーンの封印場所ですけど?」

「あの建物だろ?」

隆正さんがちらっと見える建物を示します。





じつは







あれはおとりです。



「入り口はここですよ」











「地下への隠し扉。ここが本当の道なんです。
ほら、見た目を質素にしたほうが、解り難くて発見されにくいでしょ?」

説明したのですけど

「・・・」

皆さん、口を大きく開けたまま固まってしまいました。









地下はどんよりとした空気ですが
それほど息苦しくありません。
カツンカツンと足音が響きますが
入り口はちゃんと閉めてきたので外部に漏れることはないでしょう。

竜司さんの灯りの魔術のおかげで足元がよく見えるので安全です。


このまま地下3階の深さまで進みます。














「あれ・・・行き止まりだ」

竜司さんが灯りを上まで上げて確認します。

「・・・魔女め」

「ちょ、ちょっとロゼット!暴力駄目だよ!落ち着いて!落ち着いて!」

修一さんはちょっと怒りマークが出ていますが、友恵さんが落ち着かせてくれているので
こちらに被害は着ませんでした。

それに・・・


そちらに入り口を作っていないので行き止まりなのは当然です。

扉はこちら

横の壁に背中をぴったりくっつけると
私の動きを見ていた隆正さんが不思議そうに聞いてきました。


「魔女?」









隠し部屋に入ってきた皆さんは大変疲れた様子でした。

「魔女のくせになんで忍者屋敷みたいなんだよ」

「意外性を求めていたみたいです。
それで、結果的にこのようなつくりになってしまったようですね」

「真顔で説明すんな」

修一さんにキッパリと言われました。
私は楽しくていいのではないかと思うのですが?

「ところで、ここはどこなの?」

友恵さんが辺りを見回しながら聞きました。
今居る部屋は天井が低く、明かりのない部屋です。
広さも天然の空洞を使用しているのでいたるところで出っ張った岩があります。
この中央に・・・

「あ、中央に何かの装置があるね」

灯りを灯している竜司さんが発見しました。

「なんだこれは?」

隆正さんが近づきそうになるので慌てて止めました。

「待ってください!ここからちょっとした警告をしなければなりません!」

「警告・・」

皆さんの声がはもりました。

「なんだよ。今更封印をとくのが嫌になったってことか?」

「違います」

「あの装置に何か関係が?罠とか?」

竜司さんの言葉に否定を加えて、続けました。

「その1、ユニコーンはこの上の階、地上で言う地下一階に封印してあります。
あの装置はその部屋へ一気に浮上するための風力魔術がかかってます」

「上に乗れば自動的に上に上がるってコト?」

「ちゃんと『上』に上がるかどうか怪しいもんだ」

友恵さんと修一さんの言葉を無視して続けます。

「足元から一気に吹き上げるので浮遊感というよりも地割れが起こった場合の感触に近いと思います。
一人ずつ、浮き上がったら次・・・という風に乗ってください。欲張って二人で一気に乗ると
上に浮上した後、一気に下へ落とすようになっています。死にますので気をつけてください」

「・・・判った。それが警告か?」

何か別のことを言いたかった様子の隆正さんでしたが、無視しました。

「この装置を使用したり、道具などで調べたり、術をかけたりすると
王の魔術師に警告が出て、応援(魔術師と奴隷戦士)が来てしまいます」

「ギェスト・・・か」

ギリっと下唇を噛む修一さんがいましたが、無視しました。

「それだけではありません。
ユニコーンの場所まで行くと、ここの壁から自動的に奴隷戦士がでてきて帰り道を塞ぎます。
そうしてもたついている間に、応援部隊が駆けつけて、この人数では全滅となります」

「ってか、淡々と話すが・・・まぁ、全滅だよな・・・」

隆正さんの呆れを無視して続けます。

「更に、この地下に設置している奴隷戦士は知恵があるので、この装置を使って上まで上がってきます。
更に、ユニコーンの場所にも背後から数体出現して虚を突くようにしていますので
封印解除が始まると誰か一人、封印の後ろを向かなければなりません」

「ユニコーンを助けた後、どうやって逃げるの?」

友恵さんは心配そうな表情を浮かべています。

「ユニコーンの場所に一箇所。地上への階段を設けています。
ですが、これも一癖あって、封印解除前にそのドアを見つけ、入ると
そこから数体の奴隷戦士がでてくるようにしてあります。無駄足喰いますね」

「つまり、封印を解除した後、皆でそこへ逃げ込めば言いということか」

「はい」

「その頭上で敵が待ち構えているということは?」

「出る場所はこの森の外。デール川の近くになります。魔女はそこに敵を配置していません」

「・・・」

無言になった修一さんに皆さん注目します。
まだ時間はあるので回答を待ちます。

修一さんはちょっとだけ間を空けて、私に「判った」といいました。

「この内部に詳しいのは創った魔女だ。信用しよう。
嘘なら・・・おまえも一緒に巻き添え食って死ぬだけだしな」

「死にたくないので嘘は言いません」

「あと、魔女。封印についてちょっと・・・」

竜司さんが手を半分上げました。

「封印は、俺が解こうと思うんだけど、どうかな?」

バーストロット=マギーもかなりの魔術者ですが・・・
ちょっと目を閉じて、内容を思い出して、キッパリ言いました。

「封印解除は私でないと無理です」

そして、ちょっとだけ微笑んで続けました。

「それでも、よろしいですか?」














































「やはり来よったか・・・亡霊たちめ」










次に続きます☆