シーラさんの行動は、なんとも形容しがたい体験をさせていただきました。






要は湖を覆っている氷を溶かせば、後は塔のシーラさん専用・・・いえ、ただ単に広い扉があるのですが
そこから出て行くことにしました。
今のままでは全てが凍り付いているので出ることが出来ません。
よって、氷を溶かしこの湖を元通りの姿にすることにしました。
何も難しいことはありません

塔全体を巨大な断熱機変わりにして一気に湖全体を暖めましょう。

零下の水温に適している生き物さん

ごめんなさい

フォローできたらフォローしますのでお許しください。

呪文を唱えます。
両手から熱くない炎が天井で魔方陣を描きます。
シーラさんには予め水が一気にこの塔の中へ押し寄せてくることを伝えました。
私が溺れない様にタイミングを見計らって水面に運んでくださいと伝えたのですが・・・



まさか、イキナリ食べられるとは思いませんでした。
シーラさんのお口の中は・・・・・そうですねぇ・・・何も見えません。
舌だと思える部分はザラザラしてぷよぷよして
これに当てはまる表現は生暖かいナマコの感触・・・でしょうか?

寝そべったまま、なんとなく目を閉じました。

誤って飲み込まれないよう祈りましょう



遠くから地響きが聞こえ始めました。

押し込んでいた力を解放したので塔の地表が浮上する音です。



















シーラさんが口をあけたので、滑るように背中に降り立ちました。
濡れている上に、ちょっとべとべとしている気がしたので
失礼かと思いましたが、水温を確かめるという名目で水の中に入ってみました。

「心臓麻痺を起こさない程度の温度ですね」

『魔女さん。すごいですねぇ・・・沈んでいた塔が現れるなんて・・・
勝てなかった理由がなんとなく理解できたような気がします』

ずぶ濡れのままシーラさんの背中になんとかよじ登って適当な場所に座り込みます。
私も塔を見ました。
湖の端に道のような地面も一緒に浮上しています。
塔からはまだ水が流れだしていましたが、この初春のような気温で数週間くらいで乾くでしょう。

「この湖と川とをつなぐ氷も解けたので、いつでもこの場所に行き来できますよ」

そこまで言って、私はごろんと寝転がりました。
見渡す限り、空が広がっています。千切れたくもがアクセントをつけています。
風がとても穏やかです。

ゆっくりと息を吐きました。

『魔女さん?』

シーラさんが振り返って私の顔を覗き込みます。ちょうど良く影を作ってくれます。

「ちょっと疲れました。少し休んでから扉を作らせていただきたいのですが・・・」

『では、私はこうして日陰を作っておきましょう。ゆっくり休んでください』

目を瞑って、体にかかった重圧をゆっくりとほぐします。
ここで魔女に一言言って置きたい気分です。

この呪文、体にとても負荷がかかります。全身筋肉痛になった気分です。
何度も繰り返すと血反吐を吐きそうな気分です。

魔女はこのような強力な呪文をいつも使っている記憶があります。
休むことなく毎日毎日
王の為と信じて使っていたのですね
己の限界を何度も超えて

だから魔女は強かったのでしょう。

目を開けました。
ぼやっとした景色が見えて、すぐにはっきりとした景色になりました。

体をひょいっと起こすと、シーラさんが首を少しだけ傾げました。

『ん?もうよろしいのでしょうか?』

「はい。もう大丈夫です。では・・・」

扉を作ります。
シーラさんの大きさを考えるといつもの大きさでは入らないでしょう。
広く大きく高く作ろうと思ったら

頭の血管が切れるかと思いました。

力まなくてはならないので四苦八苦です。
何とかシーラさんの大きさの扉を作れましたが、全速力でマラソンをしたような気分です。
扉を間近でみたシーラさんは目を真ん丸くして感心しています。

『凄い凄い!魔女さん!これが彼方へ続く道なのですね!!
これはこのまま進めば良いのですか!?
吸い込まれるようですね!うっすら景色も見えるようですが、あれは何ですか!?』

歓心しています。
返答に答えるため、少し息を整えてから手短に説明しました。

「これは彼方へ続いています。このまま、近づけば吸い込まれてあっという間に到着です」

『はい!では行きます!!』

大変楽しそうな面持ちでシーラさんは扉の中に入っていきます。


「・・・が!?」


「?」

微かに人の声がしたような気がしました。
辺りを見回してみますが誰もいません。
おかしいですね・・・
でも確かめる時間はありませんでした。


















氷の中へ人が入っていく衝撃なシーンを目撃した二人は
族の長である友人を連れてきて、更に驚いて慌てふためいた。

「ぎゃ!湖が!!」

「シ!黙れ!みてみろ」

物陰に隠れて湖を見下ろす。彼らの目に更に信じられない姿が映る。

「シーラ様じゃないか!あれ」

「・・・その背に乗っかっているのは・・・誰だ?」

「人間・・・だよなぁ」

距離は大分離れているが、三人の目は明らかに背に乗っている人物を明細に捕らえている。

「あいつが湖を元に戻したのか?そんな芸当できる奴がいたのか?」

「魔女が創った封印を!?」

「だって現に・・・」

「だよなぁ・・・」

シーラの前に大きな黒い輝く楕円が姿を表す。三人は声にあげず驚いた。
すぐにシーラ達の姿が消える。

「き、きききき消えた!!!」

たー。たー・・・

山彦のように声が反響する。

「なんなんだ!あれは!!」

「俺に聞くな!判るか!?」

一人の顔色が真っ青へと変わる。それを二人が目撃して騒ぐのをやめた。

「・・・魔女だ」

「うげ!!」

「やっぱ!?」

「ああ。魔女が創った封印を解けるのは、魔女しかいない・・・復活したのか!?
あの忌々しい悪魔が!!」

「ど、どどっどどうするよぉぉ」

「おまえと俺は王都に偵察するぞ!魔女が戻ったのなら何かあるはず!
おまえはここで監視!いーな」

有無を言わせない剣幕だったので、二人は反射のように頷いた。
























一瞬暗くなって、見慣れた公園に到着します。

「人はいませんね」

それにまた夕方過ぎてます。
何故でしょう・・・

『ここでは私の体は目立ちますね』

「そうですね。どうしましょうか・・・
ここに戻ると呪文が使えないんです。
また一回戻って人の姿に変わってからもう一度・・・」

『いえいえ、そのような心配はいりませんよ』

パっとシーラさんの体がはじけたと思ったら・・・

「・・・・・うわ」

人の姿になってます。
とても可愛らしい女性の姿です。服は・・・私ととてもよく似ています。

『どうです?変じゃないですか?』

「いえ、とてもよく似合ってます・・・・凄いですね」

『ええ、こうしてよく、民族の祭りにこっそりと参加したものです。
ユニコーンさんもファルコンさんも人の姿になっているのでしょうね』

あー・・なんか納得できました。
だからファルコンさんは大丈夫、と答えたのですね。

「ええと、後は・・・」

『後は大丈夫です。教えていただいた場所へ行けば良いのですね?
魔女さんもご一緒しましょう』

そうしたいのですが・・・・

















また夕方なので早く帰らないと怒られてしまいます。
土曜日だけなのですが・・・三回連続は流石に・・・

申し訳ないと思いますが、今回も顔を出さずに帰らせていただきました。





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