魔方陣・・・・

空を飛んでいる・・・?











チュンチュン♪





雀の鳴き声が朝だと告げていました。
ボサボサ頭のまま、私はぼーっと考えます。

「はぁ・・・」















なにはともあれ、早速行動開始します。
急な話で驚いていましたが、土日泊まることを家族に告げて・・・
どこへ泊まりに行くのか聞かれましたが『友達のところ』と曖昧に濁しました。


今回行く場所は複数です。

一つはユニコーンさんの封印魔方陣
一つはファルコンさんの封印魔方陣
一つはシーラさんの封印魔方陣

移動方法は扉を使います。
今まで入ったことのある場所にいけるように加工してみました。
多少時間がかかりますが、何とかなるようです。

それでも、もしもの時に対応できないかもしれないので
離れた位置で様子を伺ってから入ることにしました。

多分、用が無くなった遺跡や塔は誰もいないでしょうけどね












どれも中はもぬけの殻で、楽に侵入することが出来ました。

ユニコーンさんの魔方陣からは小さなワニのような姿のサラマンダーさん

ファルコンさんの魔方陣からはオオトカゲのような姿のサラマンダーさん

シーラさんの魔方陣からは蛇型のドラゴンのような姿のサラマンダーさん

呼ぶとき不便なので一人一人仮の名をつけることにしました。

「ワニさん」

「オオトカゲさん」

「ドラゴンさん」


『そのまんまじゃないかー!!』

全員、同じ言葉で不服を表してくれました。

決定したので変えませんけど












ちょっと疲れたので近くの草原で一休みします。
皆さん、久しぶりの自由におおはしゃぎです。
私はワニさんを捕まえて色々触って見ました。

『うわわ!!放せー!下ろせー!くすぐったいーーー!!』

「ぷにぷに。結構可愛いですねぇ」

『遊ばれてるね』

『魔女、魔女、お母さん★』

オオトカゲさんは冷静にこっちを見ていますし、ドラゴンさんは構ってほしそうにじっと見ています。

『魔女って死んでたんだね』

オオトカゲさんが残念そうに言いました。

「そうですね。ですから、封印を解いても良いかな?って思ったんです」

『魔女は望んだの?』

『遊んで〜〜』

ドラゴンさんがスリスリ甘えながら聞いてきます。
ワニさんを放してドラゴンさんの頭を撫でます。

「最後には望んでいたみたいです。死んだ後のようですが・・・。
魔女も争いが終われば聖獣を解放しようと思っていたみたいですし」

『ふぅーん。それで今更僕らを集めて一つにまとめようと思ったんだ。
勝手だね、いつもそうだ』

『きゃ〜〜ガジガジガジ』

「あの・・・」

ドラゴンさんが腕をガジガジ噛み始めました。じゃれているのでしょうが、ちょっと痛いです。

『あの時もそうだ。無理やり三等分の意識に別けて、封印に使う力にするって言い出したし。
どんなに僕らが・・・・』

『だだだだだだだだー!』

ワニさんは小さい体に似合わず、力いっぱい遊んでいます。
走るのがとても速いです

『・・・・・・・・・・・・・・・』

プチ

が、オオトカゲさんがタイミングを見計らってペチとワニさんを潰しました。
前足を伸ばして、ワニさんの体の上にポンとおきます。
ぎゃ!と声が聞こえて、静かになりました。
尻尾がピク、ピクっと動いています。

痛そうです。内臓潰れてないと良いのですが・・・

静かになったところで、オオトカゲさんが続きを言い始めます。

『・・・僕らがどれだけショックを受けたと・・・挙句の果てにもう死んじゃ』

『でねでね!それで僕らが一緒にいられるようになるんでしょ!?
良かったよね〜!また一つになって大きな体になって
また自由に空を飛んだり火を噴いたり、魔女と遊んだり!
楽しみぃぃ〜〜〜』

話を遮って、ドラゴンさんがずいっと顔を近づけてきました。

『魔女の知識もってるんでしょ?ならたびたび、毎日でもこれるよね?
そしたら背中乗せてあげる!ごぉって空飛んで、火も噴いてあげる。
真っ赤に燃えて夜なんかとても綺麗だよ〜
それを上空からみると本当に光の道っぽいから格別なんだ!
前の魔女・・・お母さんも一緒に見るのがとっても好きだったんだーー!!
だから、本当は死んでるって聞いて凄くショックだったけど、大丈夫
いつも元気でいなさい!って言われてたから落ち込んだってへっちゃらだぃ!!』

機関銃のように喋り始めます。
いつ息継ぎをしているのでしょうか??
ちらっとオオトカゲさんを見ると、言いかけた言葉を言おうかどうしようか迷った様子を見せながら
ゆっくりと口を閉じました。悪いことをしたような気分です。
その足元からじたばたと、もがきながらワニさんが這い出してきます。
ポンと弾くように脱出した後、ガジとオオトカゲさんの足を噛んでいました。

『っていうわけ?あ!記憶あるなら答えられるよね?
お母さんってさぁ、本当に元に戻してくれたのかなぁ?
捨てられたかと思ったけど・・・』

「責任を持って、元の姿に返します。
夢にまで出てくるのですから、それは魔女の望みだったと思っていますよ?」

しん・・・と静まり返りました。

『・・・魔女』

ワニさんがしょんぼりしながら呟きました。

『一番嫌なのが・・・魔女が死んだことだよ』

オオトカゲさんは、言いながら大粒の涙を流します。
それを合図にするかのように、ワニさんもドラゴンさんも大粒の涙を流して嗚咽をあげました。




サラマンダーさんは一匹の巨大な竜ですが、親の顔は知りません。
悪竜と呼ばれ、一匹を残して絶滅してしまった種族です。
魔女がまだ魔女で無い頃幼少の頃
たまたま一匹の竜を見つけました。
一人ぼっちだった彼女はこっそりと秘密の家に竜を匿って一生懸命育てました。
彼女の一族も争いによって絶えた部族でした。
戦火を逃げ延びたものはバラバラに各地に移動し、気がつけば魔女は一人でこの地で暮らしていました。


「・・・・・」

涙の意味を知っているので、落ち着くまでそっと見守っていました。

日が欠けはじめます。


















魔女が聖獣を封印するためにサラマンダーの力を利用することを思いつき、
三等分に別け魔方陣へと化けさせました。
同時に意識も三等分に別けられ、個々として確立しています。
今の彼らの姿は仮の姿です。
魔方陣の帯が形を成しているに過ぎない不安定なものです。

本体は遺跡に眠っています。
封印というよりも意識を抜いて、生命維持に必要な部分が体に残されています。

その場所は空に浮かぶ古い遺跡です。
鳥でも飛べない高さな上に、入り口がない場所です。



そこへ行く道はたった一つ


でも、その前に寄り道です。
必要な物を取りに行きましょう











泳ぎの得意なドラゴンさんに掴まって、湖の底へ向かいます。
一応、空気呼吸できるように調節しましたが、薄暗くてよく見えません。
どうしようか困っていたら、ワニさんが光の泡を出してくれました。
ニヤとニヒルに笑います。
お礼の変わりに軽く会釈をしました。

よく見えます。

湖の底に近い場所には大きな水脈がいくつもあります。
その中でグネグネと通っていきます。



この道は秘密の道です。

水の中なのであまり楽しい気分はしませんでしたが、
泳いでいるのに普通に息が出来る感覚は
ちょっと複雑で違和感が強く、落ち着きませんでした。





















水面に木が写っているのがちらっと見えます。
浮上をすると物音一つもしない、静かな森がありました。
今出てきた場所はその森の中心にある小さな湖です。幅よりも深さがある小さな湖で、
上空からでは木々の葉に隠れて確認することが出来ません。



『夜の森』
陽が当たらないくらい森なのでこう呼ばれています。

王都を南に下っていくとすぐ目に入る巨大な山のような森です。
霧の悪魔も良く出没するのと、森が入り組み、いつも薄暗い不気味さの為
人があまり近寄らない、禁忌の場所ですが
ここで魔女は修行を積みながらサラマンダーを育てていました。



『ひやぁ〜。懐かしいなぁ・・・』

湖のすぐ近くに魔女の家がありました。ワニさんは家を見上げながら懐かしそうに呟きます。

ドアノブに手をかけると簡単に開きました。薬品の匂いと埃の匂いが鼻先を掠めます。

鍵が無いなんて、無用心で危ないですね

ランプをつけます。

「・・・うっっわぁぁーーー」

煌々と照らされ、浮き彫りになった姿は悲鳴を上げなくなるようなサンプルの数々です。
その横には薬草や魔術に関する本。
術に使う道具など、様々なものが丁寧に置かれていました。

お化け屋敷の洋式バージョンとでもタイトルをつけたい気分です。
ワニさん達は奥にある寝室へ行っていました。
声だけ聞こえます。

『ボクのベットーーー!!』

『小さいね〜〜懐かしい〜〜嬉しい〜〜』

『あの時はこんなんだったのか・・・』

わいわい騒いでいる皆さんを放っておいて道具を調べました。
種類がたくさんあるので探すのが大変かと思いましたが、見易く整頓されているので
どこに何があるのか一目瞭然です。
それに・・・・

指ですーっと棚を触ってみます。

「埃一つないですねぇ」

何年も帰ってきていないのにどうやって掃除しているのか不思議でなりませんが
今は置いておきましょう。

あ、これです。

関心しながら手のひらサイズの球体を取り出します。
ガラスのような手触りです。
透明ですが、手に取ると中でもの凄い風のうねりが詰まっているような動きがあります。

これが、サラマンダーさんの儀式の前に必要な物です。
これがないとちょっと危ないので大変です。
王は死に物狂いで妨害をしようとするでしょう。
そんな危ない場所に出向いても、無傷で帰らないといけませんから
準備は大切です。

『魔女ー!床水びたしー!』

ワニさんがペシペシと床を示します。
見ると今まで歩いてきた床がほんのり濡れています。

・・・・・・・・・


あ。

「私ですね」

まだ濡れたままでした。後で拭き掃除をしなければならなくなりました。
無駄な労力を使うようです。

『魔女魔女〜お風呂〜〜!!お風呂沸かそ〜?』

『ご飯ーーー!!おなかすいたーー!!何か食わせろーー!』

ドラゴンさんとワニさんが色々リクエストを言ってくれます。

家とあまり変わりませんね

思わず苦笑いを浮かべました。
幸い、ここの間取りも設備も記憶にあるので不自由ないでしょう。

さて、どれからしたものか。そう思っていると
オオトカゲさんがどこからか雑巾を出してきて床を拭き始めました。

『ここはボクたちが拭いてるから、さっさとどれかすれば』

「では、よろしくお願いしますね」

お言葉に甘えました。

さて、場所を外へ移動して着たまま呪文で服を乾かしましょう

あっという間に乾きました。
髪だけ濡れているのが少し不服ですが


「・・・・良し、としましょう」


とりあえずやることをやってから
ここで少し寝て、夜が明ける前に行動を開始を起こします。





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