コォラとフェヴァの戦闘記

【死人蘇り編@】








〜死者の足音〜

 

 

 

「まぁ…なんっつーかなぁ…」

 

コォラは目の前で起こる現状に、やれやれを頭を掻きつつ呟いた。

刀はすでにべっとりと血で塗れ、手にはぬるぬるとした感触がある。

幸い、私服には血はついていなかった。

足元には頭をカチ割られた人間が横たわっていた。

一般市民二人ほど…

 

普通ならば殺人罪に問われること間違いなし!

 

だが、今の現状ではそうならないだろう。

 

 

油断なく辺りを見渡しながら、近づくのが敵かどうか見定める。

まぁ、見定める必要すらないだろう、ソレらは明らかに、人間とは思えない動きと姿だから

まず間違えるはずがない。

 

「コォラ、本部に連絡した。

すぐに特殊部隊が到着する手はずにしてある」

 

壊れたドアを蹴り破り、ボロボロだったドアをさらに壊しながら、私服姿のフェヴァが出てくる。

その手には拳銃が握られ、足と腰に更に二丁の拳銃が飾られていた。

腰のポーチに弾丸が山ほど詰め込んだフル装備で出てくる。

それもそのはず、フェヴァが出てきた場所は武器ショップ。

一般市民でも許可書があれば購入できる場所だ。

 

 

中は荒れている。

血で壁は汚れ、店長を思われる人物ともう1人が頭に穴を開けられ絶命していた。

やったのはフェヴァだが、殺人罪に問われることにはならないだろう。

 

「でもさぁ。ホントーに、すぐ応援部隊が来て、生きてる奴回収してくれると思うか?」

 

コォラの意見に、フェヴァはぐっと呻いた。

 

「そーだなぁ…」

 

「俺の予感だと、応援部隊も仲間入り〜って感じするけど、お前どー?」

 

頷きたい気分だが、やめておいた。

 

「さぁ、どーだろうな。とにかく、移動しようぜ。

ここで立ち話してたらいかにも食ってくださいってアピールしているよーなもんだし」

 

「そりゃ同感。長期戦になりそぅだから、まずは水、食料、軽く休憩できる安全場所を確保すっか。

今の混乱時なら生き残るチャンスは十分ある。

住人全員が変わる前に、とっとと良い場所見つけるぞぉ〜!」

 

「了解」

 

二人は近くに置いてあった車を奪って町へと降りていった。

 

「それにしても、ついてねぇなぁ…」

 

フェヴァがうめくのも無理はない。

二人とも休暇ついでに観光でも…と本部から遠く離れた国へ遊びに来ていた。

宿をとって一日目、この騒ぎに巻き込まれた。

 

「俺は結構楽しい展開になってきたって思うけど?」

 

「そりゃお前だけだ」

 

言い放って続ける。

 

「まさかと思うが、お前が災難を連れて来るのか?

 

「まっさか〜☆俺って平和主義者だから、争いは好みましぇん〜」

 

「…コォラが平和主義者だったら、世の中全員仙人だな」

 

キッパリ言ってやると、コォラは「ふっふっふ〜」と笑った。

 

「うわ!ひでぇ!フェヴァの人でなし、悪魔!

 

「お前に言われたくない」

 

 

 

 

 

町の中に入った。

そこには、人の悲鳴と混乱と、血の匂いが混じった空気が流れていた。

逃げ惑う人、それを追っかける元・人

まだ逃げ回っている人間のほうが数が多い。

だが、それもすぐに逆転するだろう。

混乱が、正確な情報を網羅して、対策を後手後手へと導く。

 

「予想通りの風景とはいえ、悲惨だなぁ…」

 

車を運転するのはフェヴァ。

人以外は遠慮なくひき殺している。

 

「ああ、今のうちに狩ってもいいんだが…。

こう、町ひとつ分だと俺1人じゃ流石に骨が折れるしなぁ…」

 

助手席でのんびり周りを見ているのがコォラが安楽そうにあくびをした。

それをみて、フェヴァが睨む。

どうにで風が入ってくるはずだ。

 

「ちょっと聞くが、なんで窓を開けっ放ししてるんだ?

 

助手席の窓は開けっ放し。

おまけにコォラは腕を一本出している。

 

「いいじゃん。銃は持っているんだし、こうすればいつでも」

 

パァン!

 

前方から飛び掛ってきた元・人間のどたまを打ち抜く。

 

「ほら、手ごろ」

 

「俺から見たら自殺行為だ!

視界悪いし数で襲ってこられたらたまったもんじゃない。

車の中だって安全じゃないんだぞ!?

頼むから、地上最悪のゾンビを自ら作らないでくれ!」

 

「それも美味しいなぁ…」

 

「こいこら…って、チッ

 

ぎゅるるゅ!

 

前方に三体のゾンビがいたので、流石にひき殺せないと判断したフェヴァは右に急カーブして避ける。

生きている人間と判断したのか、ゾンビ達は全速力で追いかけ始める。

 

「おお、すげぇ!全力疾走で走ってくるぞ!
マラソンランナー並の速度だな!それにフォームも綺麗だ!」

 

「余裕ぶっこいている場合か!この馬鹿!!」

 

「車の後方に着きそうだぞ?流石死人、体力に限界がない!!

 

「だから、余裕ぶっこくなぁぁぁぁ!!」

 

「はい、急停止」

 

ギ!!ドゴドゴドゴ

 

車体に人間がぶつかる音がする。それを聞いてからフェヴァはアクセルを全快に踏んだ。

バックミラーを見ると転がっているのが二人。

しかしすぐに起き上がって…来るのかと思ったら、左に全速力で走っていった。

どうやらあそこに人間がいたらしい。

不運を嘆く前に、フェヴァは首を傾げる。

 

「あれ?もう一匹いたと思ったけど…」

 

言ったと同時に前方の硝子に1人、被りつくように覆いかぶさった。

首の筋肉が半分消失し、赤黒い血がドボドボと硝子を伝ってくる。

頬をこれでもかというくらい硝子につけて、歯を立てている。

やけに黄色い…、汚いもの見せるなよ、とフェヴァは思った。

だが、それよりももっと確実にヤバイことがある。

 

前が見えない。

 

「こいつ!!邪魔!!」

 

振り落とそうとしても中々落ちない。

 

「タイミング良いなぁ〜。お前役者か?」

 

のんきなコォラのセリフと被るようにフェヴァが吼えた。

 

「だからテメェクソ邪魔だっつってんだよ!!どけや!!」

 

ドン!

 

ハンドルを握っていない方の手で銃を取り出し、張り付いているゾンビの眉間に一発打ち込んだ。

ゾンビは急に力を無くしたように車から剥がれ落ちる。

景色は、平坦な一本道三斜線。混乱は続くが、急回避するような出来事は待っていなかった。

 

コォラはひゅ〜と口笛を吹きながら拍手する。

 

「フェヴァも意外に短気ダネ☆

でもおかげで車乗り捨てたほうがよさそーだ」

 

硝子を指差す。

弾丸により、ぽこっと一箇所、穴が開いていた。

 

「あー、はいはい。悪かったよ」

 

「いえいえ、俺的には良いタイミングさ。

ほら、見てみろよ、あそこ…」

 

コォラが示した場所には巨大なショッピングモールがある。

この町の必要物資を全て担っている、そんな印象すら与えた。

 

「ショッピングモール。かなり大きいな」

 

「そ。食料調達もかねて、あそこ行ってみようぜ。

まだ早朝だし、人気は少ないはずさ」

 

「分かった」

 

とりあえず、二人はそこへ向ってみることにした。

 

その間にもゾンビの数は、爆発的に増加し続けている。

 

  

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