コォラとフェヴァの戦闘記

【古代蛇@】

 

 

 

今日は配送ヘリに乗って次の訓練場所の下見に行く事になった。

 

コォラはめんどくさかったがっていたが、フェヴァが強制視察と称して無理やり荷物箱へ押し込んで出発。

 

もっと簡単に言うと道連れだ。

 

「・・・・なんで俺が燃えるごみの袋に入れられているんだ?」

 

荷物箱、という紙が張ってある木箱の中の黒いビニールシートからコォラの首が出ていた。

 

「単なる洒落だ、気にするな。」

 

それを眺めながらファヴァは茶を啜る。

 

「嬉しそうだな。フェヴァ。」

 

「そーだなぁ。このままゴミ捨て場に捨てに行きたい衝動が沸いてくるが・・・なに、気のせいだよ。」

 

「ああ、気のせいだな。」

 

 

ゴゥン

 

 

上に浮くような浮遊感を感じる。着陸態勢に入ったようだ。

 

 

「今日の下見はどこだったっけ?」

 

「熱帯雨林のジャングルの中だって聞いてる。」

 

フェヴァは地図を出し、着陸ポイントと移動ポイント、到着ポイントを確認している。

 

コォラは自分の置かれる状況を見渡してから

 

「このまま袋に入ってたら熱いよな?多分。」

 

「マジで死ぬくらい熱いと思うが・・・ま、好きにしろ。」

 

「んでは、出るか。」

 

ビリビリとビニール袋を引きちぎった。

 

『着陸する。ベルトに体を固定しとけ。』

 

機長からアナウンスが流れると同時に、天井につくぐらいの浮力が発生。

 

荷物箱から出たばかりのコォラは「わぁぁ」と手足をばたつかせる。

 

「こら!機長!言ってすぐ実行するなぁ!まだ固定していない!」

 

「言ってから実行するのは当たり前ではないか。」

 

「・・・体を固定しているから余裕だな。」

 

「まぁな、たまには良いではないか。楽しそうに見えるぞ?」

 

ばたつかせるのを止めて、コォラは真顔で言った。

 

「いや、本当に楽しい。」

 

「・・・・・マジですか。」

 

「ふ、空中浮遊はなかなか楽しいが、着陸のときのGは俺にはちょっとキツイな。」

 

空中を泳ぎながら、シートに備え付けているベルトを握り、斜め45度の角度に顔を傾ける。

 

「格好つけるのは勝手だが、早くしないとGに潰されるぞ?いや、それ以前に俺を見るんじゃない、怖いから。」

 

「もし間に合わなかったときに、悲惨さで歪んだ顔をその目に焼き付けてもらおうと思ってな。」

 

見たくねぇ・・・・・いいから、早くつけろ。」

 

「OK。」

 

慣れた手つきでベルトを腰に固定すると、Gが発生。機体の胴体部分が削れるようにガガガガと音を出した後、静止した。

 

完全に止まったところで二人はベルトを外し、軽い装備をしてハッチに移動しようとすると機長からアナウンスが聞こえた。

 

『南極到着、6時間後に出発するのでそれまでに戻ってこないと置いていくから肝に命じとけ。』

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

「南極?」

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

コォラは何か言いたげな顔で、ハテナが浮かぶフェヴァを見る。

 

「・・・あれ、おかしいな?熱帯雨林って聞いたけど?」

 

「熱帯雨林の地名が南極か?」

 

「いや、そんなわけないだろう?」

 

「なら、機長に聞いてみるか?」

 

「んじゃ、コックピットへ。」

 

「うぇ〜行くのがめんどくさい。ここで聞こう。」

 

 

ゴォォォン!!!!

 

 

コォラはスピーカー近くの壁を力任せに殴った。

 

 

「機ー長!聞こえるかぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「・・・・ちょっとまて。」

 

 

『イッテェェェ!何すんだテメェ!』

 

スピーカから返事がきた。

 

 

「・・・・盗聴器でも仕込まれているのか?いや、それ以前に何故痛イ?」

 

「ちょっと聞きたいことがある。」

 

『何だ?』

 

「俺達熱帯雨林に行く予定だったんだが、南極って寒いよな?」

 

『ああ、寒いぞ。その姿じゃまず凍死決定。そこの椅子の下に防寒服があるから、適当に着てくれ。』

 

「見えてんのか?」

 

「分かった。それだけだ。」

 

『そうか。』

 

 

「まだ会話を終わらせるな!聞くことがあるだろうが。」

 

「ああ、そうだった。おーい、機長。」

 

『なんだ?』

 

「俺達次の訓練兵の実習下見をしに熱帯雨林に行こうと思ったんだが、何故この飛行機は南極へ着いてるんだ?」

 

『乗る飛行機を間違えたんじゃないのか?』

 

「ああ、やっぱりな。」

 

「ちゃんと受付の子に飛行機番号を確認してる。間違えてはいないぞ?9番だろ?この飛行機。」

 

『なら受付のねーちゃんが間違えたんだろうな。』

 

「ああ、6番と9番の紙を逆に見ていたから、間違いないだろう。」

 

 

「・・・・・・・・・・・・チョット待てコォラ。」

 

 

フェヴァは形相を凶悪へと変えつつ、コォラの胸倉を掴み上げる。

 

「お前・・・・知ってたのかぁぁぁぁ!?

 

「ふ、6と9誰でも一度は間違える数字だろ?」

 

知ってたんならすぐに指摘しろぉぉぉ!

 

「まさか南極に着くなんて思わなかったさ。南極の生命実験所で巨大な古代蛇が大暴れして数人喰われたとか、その応援のための飛行機だとは、まったくこれっぽっちも知らないな。」

 

「知ってるじゃねぇぇぇぇぇかぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

『・・・・分かってんなら代わりに任務達成してこい。そうでないとこっちが困る。』

 

「いくら払う?」

 

『・・・・・わりぃ、通信機壊れたみたいだ。よく・・・ガガ、聞こえ・ギャァ・・ねェ・・・ガッガ・・や。』

 

スピーカーにマイクを手で擦っている雑音が混じると、プツっと音声が途絶えた。

 

「ち、逃げたか。」

 

「どうする?これから。」

 

防寒服を着込みながら、フェヴァはやけ気味になっている。

 

着込み終わったコォラがショットガンの弾数を確認してにこやかに渡す。

 

「決まってるだろう。乗り込んだ飛行機を間違えたこっちが悪いんだし。」

 

お前の責でな。」

 

「一応、形だけでも施設に入って暖まろうや。」

 

「そうだな。あの機長、暖房まで切りやがったし、このままここにいても完全に凍死する。」

 

 

飛行機のハッチへ移動すると、既にハッチは開いており、吹き荒れる雪が1メートル前方すらも見えなくしている。

 

「わぁお、一見の雪景色だぁ〜。」

 

「俺には荒れ狂うブリサードにしか思えないが・・・。」

 

「まぁまぁ、ちょっとは雪国に来た事を楽しもうではないか。」

 

「楽しむ余地すらないな。実際。」

 

「そーだな。勘で地下研究所に進もうか。」

 

「・・・・・・・勘、ねぇ。」

 

先頭をコォラに任せることに一抹の不安を胸に抱きつつ、フェヴァも後に続いた。

 

 続く