コォラとフェヴァの戦闘記

【出会い編】

 

 

 

 

刀が旋回する。


コォラ自体を軸にして動く姿はまるで独楽だ。

あっと言う間にキメラが四体切り裂かれる。

軽いダンスを終えた後の様に着地すると、楽しそうに笑いながら訓練兵に言った。






「って攻撃すんだぞ★解ったな」


「お前以外出来るかそんな技」



フェヴァが冷たく言い放つ。訓練兵全員が頷くように首を揺する。

コォラは刀を鞘に納めて「ちぇー」と言いつつ、残念そうな仕草を見せたが

にやにやした表情を浮かべている。本気で誰かにやらせようという気は無かったようだ。


「フェヴァが反対するからこれ教えるのやーめた」

「誰にもできねぇだろ。もっと簡単で実用的なのは無いのか?」

「俺の持ち技は非実用的なものだけだ!!!

「それが駄目だとゆーんだ!!

「それ以外は出来るわけない!


威張るな!

一昨日渡しただろう!!作成したばかりの教育指導書。

あれにはまともで基本的な刀指南を記してあっただろう?あの通りに……



「ついうっかり刀のにした」


紙が錆をつくるか!切り捨てたのか!?


「紙吹雪、綺麗だったぞ〜



「切り捨てんなや!!!



言い放ちながら弾丸をコォラのこめかみに放つ。

予想通りあっさり避けて、避けるついでに刀の切っ先が来た。

弾丸で軌道を反らしつつ、フェヴァは体幹を半身だけ下げて回避する。

訓練兵から驚きと感動の声があがる。

フェヴァは更にコォラの太股に照準を合わせるが、止めた。

間合いをとった後、攻撃姿勢を止め、肩をすくめてため息を吐く。



「お前にまともな事をさせようとした俺が馬鹿だった」


「そうだそうだ!!


……皮肉だって解ってるんだよな?

 

「勿論!」



元気良く答えたコォラを見て落胆というか、心底疲れた様に頭を抱えながら訓練兵に指示を出す。



地雷地帯第二区を三周。終わったら解散。以上」

 

「はい」



訓練兵全員は駆け足で去っていった。

この後は管理しない

敵もキメラもいない、人工ジャングル地帯だ、基本をしっかりやった者なら怪我をすることは無いだろう。サボる奴がいても、それはそいつが選んだ道だ。

後々どんな末路を送ろうとも自業自得だ。

訓練を真面目に受けていれば生き残る確率が増える……それだけの事だ。



「じゃコォラ、俺は次のミッションについて調べておくから」



フェヴァは一端言葉を切って、声のトーンを低くした。



「訓練兵で遊ぶなよ」


「あははは。なんでそんな嫌そうなんだ?

あ!構って欲しいんだな★それならそうと


「言いつつ切っ先を向けるな。鉛玉脳天に打ち込むぞ……

 

コォラは刀を鞘に納めた。



「冗談なのにー

 

「兎に角、人に迷惑かけないように遊べよ」


「へぃへぃ。刀手入れでもするか〜」



くるりと踵を返して何故かコォラは宿舎の方へ向かう。

あそこにコォラの部屋はないが聞くのもだるいので何も言わず、フェヴァは本部へと向かった。















ここ、と」


ミッション用の資料を整頓しつつ、フェヴァは衛星ステルスからの映像をみる。

画像の端に視線を移すと、小さくだが


「ああ……少し入るのか……


フェヴァの目に一抹の寂しさが浮かぶ。


「あれからもう八年になるんだな


少し疲れた様に目を伏せ、やや間をあけてゆっくり目を閉じた。

 

 


国に碌架端という地区の一つに碌炉という地名があった。


大都市とは言わないが、それなりに栄えた緑豊かな地域だった。
平地が続き、山林が多かった。

町の発展を担っている工場区が南にある山林の中央にあり、町の大半がそこで働いていた。


国にとって重要な三大企業と言われていた。


フェヴァの一族は元華族で町の中でも有名な大富豪の家だった。

宝石商の父と母。あと兄が三人、姉が一人の大家族だった。

豪華な屋敷に住み、使用人が大勢働き、それなりの英才教育を受け、人並み以上の生活を送っていた。このまま何不自由ない一生を送るはずだった。







あの事故が起こるまで……








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