コォラとフェヴァの戦闘記
【出会い編】
第二話ー少年ー
あれは秋の始まりの昼過ぎだった。
まだ教育校に通う年齢でないフェヴァは一人庭に出て犬と遊んでいた。
庭には歩道と敷地を避ける柵などなかったが、代わりに背丈くらいの垣根があり
そこから外へ出ないように遊びなさい。と、よく言われていた。
この日も言いつけを守り、垣根から少し遠くで遊んでいた。
ガサガサ…
庭で飼っている犬が葉音に気づいて一目散に駆けだした。
「ま、まってよぉ」
犬はしきりに尻尾を振り、ソレに向かって吠えていた。
一生懸命走りやっと追いついたフェヴァは息を切らせながら、倒れている少年を見て吃驚した。
「わ。わ。」
同じ歳くらいで、俯せに倒れている。服は何かに引き裂かれた様にビリビリのヨロヨロで、その位置から全て流血している。あっと言う間に芝が赤く染まり始めた。
しばらくぽかんと少年を凝視していたフェヴァだったが、犬が鼻先で少年をつつき始めたので
「だっ、だめだ」
ハッと気づいて慌てて犬を制す。
すると勢い余って少年をころんと動かしてしまった。
「わ。わ」
自分の服に血がべっとりついた事よりも、動かしてしまった事に吃驚して、意味なく手を振ってしまった。
「ど、どうしょ…」
半泣きになりながらフェヴァは少年を見下ろした。前胸部も腹部もスリ傷だらけだ。
「…?なにこれ」
栄養失調の様に痩せた体。
その心臓部分の皮膚の下に手の平サイズでひし形の様な膨隆がある。
皮膚の下にあるにも関わらず、碧の光沢を放っているように思えた。
フェヴァは興味を覚え恐る恐る触ってみた。
堅い感触がする。何か埋め込まれている様だ。
しばらく膨隆を見ていたフェヴァだったが、不意に少年が目を開けたので吃驚して飛び上がった。
「わ。わ。わ」
少年は緩慢に上半身を起こしフェヴァをじっと見る。
フェヴァはやや混乱しながら何とか声を絞り出した。
「だ、だいじょうぶ…?」
少年は少し沈黙して、頷いた。
「きみ、だぁれ?」
少年は少し沈黙して、頷いた。
「そのきず、どうしたの?」
少年は少し沈黙して、頷いた。
「ち、ちょっとここにいて。おとなよんでくるから」
少年は少し考えるように沈黙して、ゆっくり頷いた。
承諾を得たフェヴァは屋敷に大急ぎ戻り大人を呼んだ。
フェヴァの服についた大量の血痕を見た使用人達は顔色を変えて慌てたが、
フェヴァの話を聞いてすぐに少年を屋敷に運んだ。
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