「何を埋める?」

 砂をシャベルで掘りながら僕が聞いた。

 「タイムカプセル、未来の自分へ・イン・ハート!ってくらいだから、今一番自分にとって大切なものにしようよ」

 「ええ〜。忘れそうだから、適当な物にしない?」

 

 もう小学5年生。

 何も分からない妹や弟達を面倒見なきゃいけない学年だ。

 だからじゃないが、こんな覚えているかどうか分からない記念に、本当の大切な物を入れたくはない。

 ぼくは、どこか覚めた目で幼馴染の女の子を見返した。

 

 「バッカねぇ!大切なものほど忘れないのよ!」

 女の子は踏ん反り返ってそう言いきった。ぼくはしばらく考え、それもそうだと納得した。

 「そーだね。大切なものを入れておけば、忘れない」

 「でしょ?」

 

 

 それから少し間があいて、ぼくたちはまた集まった。それぞれの大切な物をビスケットの缶に入れて、地面に埋める。パンパンと土を硬く踏み鳴らすと、服がドロだらけになった。

 「じゃ、いつ掘り出す?」

 「ん〜?大人って何才からだっけ?」

 「ええっと、お酒がのめるのはハタチだって、お父さんから聞いたよ?」

 「ハタチって、二十才だよね?今が十才だから……」

 「十年ご!」

 にかっと二人で笑って、お互いの手を叩いた。

 「今日の十年後!それでも忘れてたらいけないから地図を書いとこうよ!」

 「賛成!それじゃ、僕んちに上がって!二人で地図をつくろうよ!」

 

 

 十年後に出逢う、大人になった僕たちへ〜〜〜




タイムカプセル







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