コォラとフェヴァの戦闘記 【古代蛇B】 通路に出て、コォラとフェヴァは武器弾薬の装備をもう一度確認する。 「あ、フェヴァ、これやるよ。」 「サンキュウ・・・・って、コォラ、このグレネードランチャーは何処で手に入れた?弾も。」 「ヘリの中。」 「・・・・もう一つ聞くが、その小型ロケットランチャーは何処で?」 「ヘリの中。もう少し詳しく言うと、防寒服と一緒に入ってたぞ?気づかなかったか?」 「ああ。」 「ま、当たり前か。フェヴァが気づく前に先に取ってたからな。気にするな。」 「俺が気にしているのは、その二つを一体何処に入れて持っていたという事だよ。」 「・・・・なぁ、これは秘密なんだが・・・四次元ポケットって知ってるか?」 「自称ネコ型のロボットのポケットだったような・・・?今、何の関係も無いだろう?」 「そのポケットが実は実在していて、しかも俺の軍服胸ポケットにその機能が備わっているとしたら・・・お前 どうする?」 「どうもしねぇ。」 「・・・冷たいな、興味ないか?見たくないのか?」 「見たくねぇし、知りたくもねぇ。」 フェヴァの冷たい一言にコォラはガッカリしながらやれやれと首を振る。 「そうか・・・覗けば、この世の終わりと始まり・・天国と地獄が逝きながら体験できるのになぁ・・・惜しい。」 「どんなポケットを所持しているんだ。っていうか”行く”じゃなく”逝く”のか!?」 「さてと」 コォラは装備をし終わり、立ち上がった。 「準備できたし、行くか。」 「…………分かった。」 フェヴァも装備を終え立ち上がる。 「一応言っとくけど、今から行っても車には乗れないぞ?」 「いや、蛇は振動とか体温とかに敏感に反応するから、ああいう大きな振動を起こす車はかえってこちらの居場所を教える。乗らないほうが安全だ。」 「まともな発言だが・・・意外な気分だ。」 「ん?」 「お前なら誘き寄せるのに積極的に使うのかと思ってた。」 「それでも良いんだが、俺は敵の正面を見ながら攻撃するよりも、 敵の後姿を見ながら攻撃する方が、敵の驚きと絶望が混じった表情を より一層堪能できてスッキリ気分爽快になる。 おまけに敵も中々手を出しにくい。」 「せめて、得意って言ってくれ」 コォラとフェヴァは車が通った後を画面の風景と地図とを照らし合わせながら進んでいく。 その足取りは慎重で、僅かな違和感も逃さないように随時気を張り、視線を鋭くしていた。 「・・・誰か居るな。」 コォラが壁に背をつけながら、慎重に近づく。 銃を構えながら、サッと人影の横に滑り込んだ。 「止まれ。」 「ぎゃぁ!」 「コォラ、研究員だ。」 怯えた表情で手を上げたのは、マントと一緒に出て行った研究員の一人だった。 「他には・・・・。」 「居なさそうだな。置いていかれたか?それとももう蛇の胃の中かな?」 「・・・だから、何でそう喜びの表情を浮かべるんだ?」 リラックスはしていないが、とりあえず軽く緊張を取る。 「あの、他の人は車に乗って先に行ってしまったんです。蛇は振動に凄く敏感だから、乗ってたら危ないって言ったんですけど・・・。」 「・・・・馬鹿だな。」 「馬鹿だな・・・・。」 「・・・・」 「微妙にハモらんな。」 「狙ってたんかい!」 「折角同じ言葉言ってんだ、息の合った瞬間ってのを体験したいじゃないか。」 「ああああ、もう、こいつは話の腰をバキバキに折るなぁ。」 「それが生き甲斐なもんで・・・。」 「捨ててしまえ、そんな生き甲斐。」 ドガン! 爆発音と振動が発生。 二人は目で意思確認を行うと、すぐさま音の方へ走り出す。 「あ、待って下さい!」 研究員も慌てながら二人の後をついて走った。 熱で近辺の温度が急激に上がっているのを肌で感じる。 爆発現場が近いようだ。 また目だけで意思確認をすると、コォラが先頭を音を立てずに素早く歩き、その後をフェヴァが研究員を連れて同じ様に歩いた。 ついた所は3階が吹き抜けた巨大な通路で主に荷物を運ぶ通路のようだ。 爆発があった事を示すように、残り火があちらこちらで燃えている。 「あそこの熱パイプが一本破けてる。」 フェヴァが真上の階段近くの熱パイプを示すと、コォラは呆れ顔で頷いた。 「ああ、どっかの馬鹿が熱パイプを撃ってしまって、それにも気づかず撃ち続けてしまったんだろうな。」 「こ、この車は!? あああああああ・・・・。」 研究員は愕然と黒焦げになった元車を眺めている。 「なら、その横や上に乗ってる黒くて長い墨は警備員達って事で良さそうだ。・・・・ひぃ、ふぅ、みぃ・・・。」 「数えるな!」 「おや?よく見ればあっちにも3体黒墨があるな。破損パイプの位置を見ると、向こうから撃って逃げようとしたが逃げ切れず、その時丁度、車でやってきた警備員も巻き込まれ、両方とも火にアブされたって感じ・・・かな?」 「車についている墨を見ると、殆ど無傷だ。多分間違いない。連絡を取っていたロバートに聞けばハッキリするだろうけど。・・・・・人為的ミスで巻き添えを食って死んだって事だよな・・・・・嫌な死に方だ。」 「ああ・・っと、やってきたぞ?」 コォラがにやりと笑うと、前方の曲がり道から古代蛇が出てきた。 フェヴァは悲鳴をあげかけた研究員の口を手で押さえつつ、様子を伺う。 古代蛇は生きている三人には気づかず、側に落ちていた焼きすぎて焦げ焦げの人を食い始めた。 「蛇はこげた肉って好きなのかな?」 「そうゆう発想しか浮かんでこんのんか?」 「フェヴァ、あの口見てみろよ。蛇は普通丸呑みなのに、こいつはガジガジ噛んでるぞ?よっぽど肉汁が好きとみえる。」 「噛んでるな・・・って肉汁と関係があるのか?」 「飲み込んだら肉の滴る血の味が楽しめんだろうが。」 「・・・・・・いや、そんな当たり前のように言わなくても・・。」 「焼きすぎるのは体に毒だと思わんか?」 「それ以前の問題だぁ!」 フェヴァが言うと、古代蛇が三人の方を向いた。 どうやら少々声を大きくしてしまったらしい。 古代蛇は体を威嚇するようにトグロを巻き始めた。 「あ〜あ、フェヴァ、やっちまったな。」 「誰ノ責ダ。」 「んじゃ、逃げるか。」 一気に走り出す三人。 古代蛇もその後を追う。 「コォラ、このままじゃ、完全に追いつかれる。どうする!?」 「そこで走っている研究員を囮にして逃げ切る!」 「ひぃぃぃぃ!!!」 「他には無いのかぁぁぁ!」 「なら、お前やれ!」 「まっっっっぴらご免だぁ!!」 通路は途中で途切れ、梯子で上に登れそうだ。 ほんの3メートルの高さしかないし、人一人が通り抜けられそうな入り口なので、古代蛇は入れそうに無い。 「ここを上がるぞ!フェヴァ!」 「分かった。」 フェヴァは軽やかに梯子を駆け上がると、蓋をしていた鉄格子をずらして上に上がり、素早く辺りの安全を確認した後、呼びかけた。 「異常なし、上がっても大丈夫だ。」 「分かった。じゃ、研究員A、後は頼む。」 「えええええええ!!!!」 「マジで囮で使うのかぁぁ!?」 「俺の方が上がるの早いし、手が震えまくっている研究員Aを待ってるうちに蛇に食われるのも癪だしな。」 「こいつは・・・。」 フェヴァがうめいている隙に、コォラはカンカンと軽やかに上がってきた。 「よし、到着っと。よーし、研究員A上がってきて良いぞ〜。」 「へ・・ヘビがぁぁぁ。」 「もう来たか。どうする?研究員A、ヘビに生きたまま喰われるのと、頭に一発喰らって楽に死ぬのと、どっちが良い?」 「どっちを選んでも死ぬじゃないか!」 「どっちも嫌ですぅぅ!!!」 研究員は悲鳴を上げながら梯子を登るが、遅い。 入り口の穴から、研究員の体半分が出て、それと同時にヘビの大きな口も見える。 喰らいつかれそう。 このままだと、コォラの言った前者になりそうだ。 「ま、後味悪いし、仕方ない。」 コォラは連射型のショットガンを、腰砕けになりながら穴から抜け出そうとしている研究員の背中からすっと下へ向けた。ヘビの巨大な口が真近に迫っている。 ダダダダダダダダダダ トリガーを素早く引き、古代蛇の口へ撃った。 シャァァァァァァ 古代蛇は弾が口の中に入るとすぐに口を引っ込める。 その隙にフェヴァは研究員を引っ張り上げた。 ズルズルズルズルズルズルズル 古代蛇の這って行く音が段々遠くなってきた。 「逃げたようだな。」 「流石に鉛弾は美味しくないらしい。グルメな蛇だ。」 「・・・グルメって言うのか、それは。」 「鉛は不味いからな。」 「喰ったんかい!?」 フェヴァが本気でツッコミを入れたので、コォラはへらっと笑った後、 「試しに・・・。」 真顔で肯定した。 「そんな物喰うなぁぁぁぁぁ!!!」 フェヴァはいろんな意味で哀しくなってわめいた。
|