コォラとフェヴァの戦闘記

【古代蛇C】

 

 

 

 

監視室のロバートは無線が途絶えて焦った。

 

現場に近いモニターを見ると、炎が写っている。

 

彼は更に焦って無線を続ける。

 

「おい、おい!」

 

「ムーダーだって、全員丸焦げだ。」

 

戻ってきたフェヴァが静かに告げた。

 

ロバートは絶望に歪んだ顔になる。

 

「焼き過ぎて蛇さえ手をつけなかった品物になったぞ。」

 

コォラはぽんっとロバートの肩に手を置く。

 

「考えもしないで使うと、大体全滅するんだよなぁ〜こんな風に。」

 

火が写っているモニターを指し示しながら、コォラは言い聞かせるように呟いた。

 

ロバートはコォラの手を振り払って、叫んだ。

 

「なんでお前らなんかが生き残って、優秀な彼らが死ななきゃならないんだ!!!」

 

「そりゃ、指揮官が馬鹿だからさ。」

 

「おまけに爆発するような場所で発砲する馬鹿がこの場にいたって事も原因だ。」

 

な〜。と、コォラとフェヴァはお互いを見合わせた。

 

「彼らが死んでしまって、一体誰がわしを守るんだ!?

 

「知るか。」

 

「自力で頑張れ。」

 

 

ロバートが怒りに体を震わせいたが、二人は気にせずこれからの事を話し合う。

 

「さてと、これからどうする?」

 

フェヴァはそこら辺に腰をかける、コォラも適当に座る。

 

「そーだな、俺的には不利的状況で戦うことは嫌いだから……蛇と肉弾戦ってのはパス。お前やるか?」

 

「完全に俺もパス。」

 

「肉弾戦はナシにすると……放っとくか?蛇。」

 

「その案もOKだが、それだとなーんか上からネチネチと説教食わされそうだな。」

 

フェヴァが言う説教にコォラはとある人物を思い出し、顔をしかめた。

 

「あー、考えただけでも殺したくなるな。」

 

「………多分、そう思うのはコォラだけだよ。」

 

「そっかぁ?あんな殺意を沸かせるような皮肉は刀の錆にしたいな。」

 

「いや、普通の説教だと思うが?」

 

「俺は人に指図されるのが嫌いだ。(キッパリ)」

 

「…真顔で言うなよ。」

 

話が段々逸れていっている。

 

そんな彼らの余裕な姿が頼もしく見えたのか、ロバートはふらふらと近づいた来た。

 

それに気づいたコォラは手でシッシと追い払おう。

 

ロバートは負けじと懇願した。

 

「・・・・・・・なぁ、わしを守ってくれないか?」

 

「ヤダ。」

 

「願い下げ。」

 

コォラとフェヴァはロバートに向くことすらせずに、即答で断った。

 

だが、ロバートも引かない。

 

「ここから出るには内部に詳しいわしが居た方が絶対良い!……どうだ?」

 

「フェヴァが完全に覚えているぜ。」

 

コォラはフェヴァの額を指でコツコツと押す。

 

鬱陶しそうに指を払いながら

 

「先ほど内部設計図を見てきたからな。」

 

自信満々のフェヴァにロバートは言葉を失う。

 

その様子を楽しげに眺めつつ、コォラは作戦内容を手短に話した。

 

「よっしゃ、なら、ここの温暖設備をぶっ壊して蛇をじわじわ凍死させるか。」

 

「OK。その方が手っ取り早い。」

 

「場所は?」

 

「ここからC区域にある動物実験室近くのエレベーターをB・4で降りて、運搬用通路を真っ直ぐに進んだらいくつかの設備室がある。その中の一つに空調設備室があるから、そこへ行けばすぐすぐだ。」

 

難なく答えるフェヴァの様子にロバートは目を見開いて驚く。

 

二人は驚いているロバートを放っておいて、エレベーターへと向かった。

 

 

 

 

後ろを振り返りつつ、コォラはにやりと笑う。

 

「見たか?あのロバートの顔。最高だったな。」

 

「粘るかと思ったが、あっさりと引いたな。」

 

フェヴァもにやりと笑った。

 

「そりゃそーさ、俺らはこれから蛇の巣に行くんだ。ついてくる訳ねーって。」

 

「だろーな。あんなのにウロウロされると、こっちの身も危なくなる。」

 

そう言いつつ、コォラは時計を確認した。

 

「ヘリ出発まであと3時間。それまでにカタをつける、道案内頼むぜ。」

 

「了解。蛇に遭わないようになるべく熱パイプが通っていない場所を行こう。」

 

「ああ、その方が乱射しやすいしな。」

 

にやりと笑うコォラを横目で見つつ、フェヴァは一応忠告した。

 

「…ロケットランチャーは撃つなよ?」

 

「チッ…。」

 

「チ、じゃねぇ…建物ごと壊す気か!?」

 

「このくらいで壊れねぇよ。」

 

「壊れる!」

 

「分かったよ。蛇の口狙うから、それで良いだろ?」

 

思いっきり妥協した口調で、コォラは唸った。

 

「(ヘリに小型ロケットランチャーなんぞ積み込んどくなよ…)」

 

状況を忘れながら、フェヴァはため息をついた。

 

 

 

 

そんなこんなで、熱パイプが配備されていない通路を通り、C区域エレベーター前に到着。

 

そこから一気に地下4階までノン・ストップで降下。

 

「さてと、もしかしたら居るかもしれないから、気ぃ引き締めてかかるぞ。」

 

「…台詞は立派だが、無気力そうだな。」

 

「そんな事はないぞ?こうでもして押さえておかないと、暴走しそうなくらい楽しいからな★」

 

目がギラついた、殺る気満々のコォラを見て、フェヴァはやれやれとため息を一つ。

 

「頼むから、地下で暴走するな。巻き込まれて死にたくない。」

 

「だから、押さえてる。」

 

「……頑張れ。」

 

チンッとエレベーターの表示がB・4を示した。

 

ゆっくりと横スライドのドアが開く。

 

古代蛇対戦ではあまり役にはたたないだろう銃を構えつつ、素早く通路へ滑り込んだ。

 

車二台が通れる通路には一定の間隔に電灯があり、視界は良好だ。

 

二人は足音を立てないように移動しながら、終始周囲に気を配る。

 

前も後ろも、壁の上も…

 

相手は蛇なのだ。

 

人間相手として考えてはいけない。

 

普通ならこのような状況は慣れていないだろうが、この二人の普段の仕事が研究室から抜け出した猛獣やキメラの処分なので…物怖じはしない。

 

ハッキリ言って、幸か不幸か全く分からない。

 

 

二人はでも息をするのを最小限にして、辺りの音を探索する。

 

 

ヴヴヴヴヴ

 

 

研究所を維持していると思われる電気系統や空調管理系統の機械音が静かな中に木霊する。

 

きっとここでも多くの人が働いていただろうが、今は人一人いるかどうかも怪しい。

 

ゆっくりと移動すると『空調設備室』のプレートを発見する。

 

「ここだな。」

 

コォラが小さく呟きながら、ノブをゆっくりと回し、そぅっと中に入った。

 

続いて、フェヴァが辺りを警戒しながら、コォラの合図と共に中に入った。

 

 



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