コォラとフェヴァの戦闘記

【死人蘇り編2】








〜死者の遠吠え〜

 

 

ちょっとした広い敷地内に車がちらほらと停車している。

巨大なショッピングモールは地上6階建てで楕円形の姿をしていた。

見るからに頑丈そうで、食料が多く詰まっていると予想できる。

 

「ちょっと様子見てみるか」

 

コォラが助手席から降りつつ、手短なゾンビを二体、確実に仕留めた。

 

乾いた空気によく響く。

 

「お…まえ!呼ぶなっつってんだろーが!!」

 

フェヴァも車から降りながら、半眼で呻きつつショッピングモールへと走り出した。

その後に続き、コォラも走る。

そしてフェヴァに負ぶさった。

 

「ぅぐお!?」

 

「どーして俺が怒られなきゃなんないんだっつーの。

寄ってくるのはアイツらの本性だってゆーのに、決め付けられちゃたまんないねぇ…」

 

耳元で恨みがましく囁かれる。

普通の場合なら別にどうってことないが…

 

「おま!のけよ!!」

 

全速力で走ってくるゾンビが数対、群れを成してきているのだ。

噛まれたら即効仲間入り

 

「じゃ、謝ってくれよ、フェヴァ〜★

俺結構傷ついちゃったんだよねぇ〜、ちゃーんとお詫びの言葉プリーズ★」

 

「状況を考えて言え!!」

 

フェヴァは喚きながらもコォラを背負って全力疾走で走った。

だが、コォラは「楽チン楽チン」と言うだけで降りようとはぜず、片手を高々と天へ上げると興奮したように銃を上に数発乱射した。

 

「はいよ!フェヴァ〜〜!風のように走れ〜〜GoGoGo!」

 

「俺は馬じゃねぇぇぇっ!!

つーか、弾を無駄に使用すんなぁぁ!!

 

周りの悲鳴と同じ音量で叫んだ後、フェヴァは小さく謝った。

 

「あーあーあー、俺が悪ぅございました!だから退いてくれ」

 

「おう。それならいいぜ〜

だがなぁ、あと50センチでドアにつく。

ここで降りるのもちょっとキリが悪くていけないよーな気ぃしねぇか?

どうせだから最後まで運んでくれてもバチは当たらないと思うぜ★」

 

「俺の弾が当たる確立は高いぞ…」

 

憮然としながら呻くように言ったが、フェヴァはショッピングモールの中に入るまでコォラを背負っていた。

防弾硝子で出来ているドアは計3つで、どれも観音開きになっている。

その中の一つが開いていたのでそこから入る。

すぐにドアの鍵をかけると、フェヴァはやっとコォラを下ろして乱れる息を整えた。

 

「ううん〜。フェヴァは乗り心地最高だったな〜、また馬ヨロシク!」

 

「次はないとおもへ……」

 

笑顔で言ったコォラに対して、フェヴァはトゲを込めて呻いた。

 

「ん?」

 

膝をおった体勢でハっと気づく。

あれだけ走って追いかけていたゾンビがドアにぶち当たらない。

 

「(こうゆうパターンだと勢いあまってドアに激突ってのが一般的なんだけど…)」

 

窓の外を見る。

 

「……コォラ。」

 

「ん?なんだ?もう休憩いいのか?」

 

「追っかけていたゾンビなんだが…」

 

外には追いかけてきたはずのゾンビ6人が頭から血を流して倒れている。

 

「お前、射撃も出来たんだな…」

 

「ふふん、舐めてもらっちゃぁ困るぜ★これでも俺は隊長だ!!

 

「知ってる」

 

「そんな俺が刀のみの直接攻撃派で、遠距離攻撃はからっきし駄目だと思っていただろ!

 

「ああ」

 

「大正解!!!」

 

「意味わかんねぇぇぇぇ!!!」

 

フェヴァは頭を抱えながら鬼のように叫んだ。

 

「だから何がいいたいんだお前は!!

あれはコォラの仕業じゃないのかよ!?誰か助けてくれた奴でもいるのか?ああ?」

 

「ぞびお君」

 

「・・・・・・・・・・ゾンビになったんなら早く言えよ、今殺してやるから」

 

「いや、マジだって。見る?

 

笑顔でいいながらコォラはジーンズのポケットをゴソゴソと探る。

 

「ん?……お守りってことか?」

 

「んにゃ、ナマモノ」

 

「ちょっと待て!ナマモノって…」

 

「生きてるってこと★」

 

「更にちょっと待てぇぇぇ!!

生きてる物をポケットにいれんじゃねぇ!」

 

「ぞびお君は凄いんだぜ!俺、こいつ持っていると獲物外す気が全くおきねぇんだ!

きっと射撃を手伝ってくださって、ああしてゾンビを撃ち殺せたんだぜ★有難いお方だよ、マジで

 

「だったらポケットに突っ込んどくな!!

微妙に敬語なのもなんっつーかムカツク!!」

 

「ああ!居た居た!ほら、このお方だよ」

 

コォラが嬉しそうに出した物は、蜘蛛だった。

しかも、蝿取り蜘蛛で、足がバラバラになっていて、おまけに…

 

フェヴァはなんとか平常心を心に塗りつけながら、冷静さを保った。

 

「…生きてるといったが、作り物じゃないか…」

 

「このぞびお君がいる限り、俺が射的をはずすことはありえない!」

 

「それは凄い自信だなぁ…」

 

フェヴァが呆れていると、コォラは蜘蛛のおもちゃの状態に気づいて悲鳴を上げた。

 

「ぞ、ぞびお君がバラバラ!!」

 

「今気づいたのかよ」

 

「うわ!キモぃ!!(投)」

 

「捨ててどーーする!!!」

 

「どうもしない」

 

「おま……っ。今までの話はなんだったんだ…。

いや、もーいい、もーいい、もー聞きたくない」

 

脱力しながら、フェヴァは軽く頭を振って冷静さを取り戻した。

あの蜘蛛がどうなってようとこっちが知ったことじゃない。

 

「ちょっと、貴方達、そこで何やっているのよ。

早くこっちへいらっしゃい!」

 

女の声がして、フェヴァとコォラは一斉に顔を置くの商品棚へと向ける。

髪を一くくりにした長身で痩せ型の女性と、警察官のガタイが良い男性が立って手招きしている。

 

「そこにいたらヤツラが硝子に激突する。早く来い!」

 

「ああ、ホントーだ」

 

いわれて、コォラが体を預けていた入り口の外を見ると

血まみれの住人達が大口をあけ、歯を立てたり手を硝子にぶち当てたりしていた。

まるで鯉が餌に群がっている熱狂がそこにある。

 

「フェヴァ。俺らの会話の観衆がこんなに沢山…」

 

「……感動したか?」

 

「んにゃ、どっちかってゆーと爆破したい★

 

コォラとフェヴァは二人に向って歩く。

 

「さ、こっちへ」

 

女性が不安そうな表情ながらも気丈に言う。

 

「ここも安全じゃないから封鎖するんだ、手伝ってくれ!」

 

中年の警察官の指示で、二人はドアにバリケードを作り始める。

 




 

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