コォラとフェヴァの戦闘記

【死人蘇り編3】








〜一難と二難と災難〜

 

 

バリケードを作り終えたところで、中年警察官は改めて自己紹介をした。

 

「俺はこの町の警官を勤めているモリスという者だ。こちらは…」

 

「私はルオン。医者をやっていたの」

 

「どうもこんにちは、俺はフェヴァ、こっちはコォラです」

 

「よろしく」

 

奥へと歩く。流石ショッピングモールの内部だけあって、内装が品物だらけ。

だが、ところどころ血で汚れている。

それをちゃんと視界に納めながら、フェヴァは丁寧な口調で聞いた。

 

「この町、一体何が起こったんですか?」

 

「分からないの。急に…寝て起きたらいきなりこんな事態に…」

 

ルオンの表情が悲しみに曇った。

これは親しい人を亡くしたと判断して、フェヴァは話題をモリスに振った。

 

「お聞きしますけど、対応とかはどうしていますか?外部の様子とか、軍の動きとか…通信とか出来ていますか?」

 

「いいや。まだテレビとかは写るんだが、どこも混乱している場面が移っているだけだ。

本当なら早く避難地へと向いたいものだが、こんな様子じゃ出れそうにない…。」

 

「だよなぁ。外出ると即効餌食になるだろーし」

 

「コォラ!!」

 

諌めると、モリスが苦笑した。

 

「いや、本当の事だ。だから我々も救助が来るまで待つことにしている。

君達もそうするといい……避難所には弟がいる。きっと勇敢に活躍しているだろう。

せめて俺の無事を知らせたいな」

 

「そうですね」

 

フェヴァは短くそう答えた。

今度は広いホールに出る。小さな噴水や椅子などが置かれているちょっとした休憩所だ。

全体が青っぽい色合いでメタリック的に建築されている。

 

「お帰り、どうだった?」

 

おなかの大きな女性がルオンに不安そうに近づいてきた。

 

「ええ、異常はなかったわ。お腹の調子はどう?」

 

「ええ、大丈夫、大丈夫…この子、強いもの」

 

どうやら妊婦のようだ。

続いて妊婦に身を寄せていた男性がモリスに話す。彼が彼女の夫だろう。

 

「やっぱり1人ゾンビいたぜ、心臓縮まるかと思った」

 

どうやら、この四人は知り合いのようだ…。

 

「よぉ。そのガキどもなんだ?」

 

呼ばれたので振り返る。

パッとみて、服にモールの名前がある。ここの警備員だろう。三人いて同じ服装だ。

今話しているのがリーダー格のようだ。細身で長身だが、体格はよさそうだ。

後の二人は後輩…といったところだろう、そうゆう空気が出ている。

 

「玄関にいた。ちょうど、封鎖してきたとこだ」

 

「け、どっから入ってきやがった?このガキどもは」

 

ツカツカとコォラに向って歩いてくる。

上から見下ろされ、コォラは少し不愉快そうだったが、いつものことだ。

 

「玄関からに決まってるだろ?開いていたからなぁ…無用心だぞ?

助かりたかったらもっと安全確認しとけ」

 

「威勢が良いのは頼もしいが、時と場合を考えていうことだ…ん?

お前、その銃最新のモデルじゃないか?それにその腰につけているのはなんだ?」

 

「刀だ。見たことないのか?」

 

「へぇ、しらねぇな。じゃ、銃をよこせ」

 

「なんで?」

 

「ここでは俺がルールだ。無駄に弾を発砲されちゃ困るし、なによりこれは子供のおもちゃじゃない。

俺が親切に持っててやろうっていってるんだ、よこせ、でなきゃ追い出すぜ」

 

「は?なに言ってんだ?こいつ。こうゆう時こそ、1人一丁持たせておくだろ?

こんな周りが敵だらけの状態で銃を持たないってのは素っ裸でいろっていうのと一緒だと思わないのか?

案外馬鹿なんだな

 

「てめ!!」

 

「子供相手によさないか、リック」

 

モリスとフェヴァが止めに入った。

 

「コォラもやめろ。ここで喧嘩しても無意味だ」

 

「俺的には敵を倒せて有意義★」

 

「だからやめろって…(汗)」

 

「そっちのガキ、お前もだ!何三丁も銃を持ってやがる!それ全部渡さないとお前も追い出すぞ!」

 

 

「ほら、ムカツクだろ?倒すか?」

 

「やめろって…」

 

「そうよ、やめなさい。さ、素直に渡しましょう。

かなり、すっごく不本意だけど、追い出されるよりはましよ」

 

ルオンが小声で言う。

コォラは凄く嫌そうな表情になりながら、ため息を吐いた。

 

「ええっと、リック、だっけ?」

 

「あ?リックさん、だろ?」

 

「さっきも言ったけど、俺らに銃を取り上げる権利はお前に一欠けらもねぇけど

ここは万里の長城の距離ぐらい譲って一丁だけ渡してやる、フェヴァ」

 

「じゃ、これな」

 

フェヴァは足に装備してあった小型拳銃をポンとリックに投げ渡す。

リックは一瞬驚きながらも受け取った。

 

「おい!一丁だけか!?他にも3丁あるだろうが!」

 

やかましい。お前ら三人銃を持ってるだろーが。

どっちかってゆーと銃を持っていないルオンに渡すのが常識だろーが」

 

話してもラチがあかないと思ったのだろう、リックは後輩に視線を送って

 

「おい、取れ」

 

命令する。後輩がフェヴァとコォラに迫ってきた。

それを見ながらフェヴァは呻いた。

 

「あーあ。結局はああなるんだよな」

 

「そーだなぁ。全く、がめついヤツラは困る。じゃ、フェヴァ頼むぜ。俺、殺りだしたら加減できねぇから

 

苦笑するコォラにフェヴァがため息をつく。

 

「だろうな」

 

言って、すぐにしゃがみこんだ。

相手の掴もうと手が空を切る。そこへフェヴァがかがみながら弁慶の泣き所へ蹴りを喰らわせる。

「うわぁ!」と叫びながら警備員はバランスを崩す。

その動きを見ながら今度は立ち上がって、バランスを崩した警備員を突き飛ばした。

コォラに掴みかかろうとしている警備員が、避けきれず一緒に倒れる。

 

チャキ

 

銃の引き金を引く音がして、フェヴァは留まって音の方を見た。

リックが怒りの形相になり、こちらに銃を向けている。

 

「おいおい坊や、抵抗すると撃ち殺すぜ?」

 

「ああ、別に構わないさ」

 

「なに!?」

 

フェヴァがリックに腕を伸ばすと、その手には銃が握られていた。

今まで素手だったのに、いつの間に握っていたのか…リックは驚いた。

 

「一発でも俺やコォラに撃てば、間違いなくお前を射殺する。

なぁに、この混乱時、人間が一人二人同じ人間に殺されても罪に問われる事は少ない。

死体をゾンビに投げ込めば、証拠は完全に隠滅…。

リック、…逆は絶対にあり得ないぞ?

さぁ、どうするんだ?」

 

「このガキ…」

 

リックが呻くと同時に

 

 

「きゃぁぁぁ!」

 

 

「レイジャー!?」

 

妊婦の悲鳴が響く。見ると、妊婦の腕を盗るくらい密着した警備服を着たゾンビが襲っている。

夫が「ゾンビだ!」といいながら棒で殴ろうとしていた…が、その前に

 

ドン

 

銃音がして、ゾンビが倒れた。頭から血を流してピクピク蠢いている。

フェヴァの銃口から煙が立ちのぼっていた。

 

「ったく。周りには注意しろって言ったのになぁ、フェヴァ」

 

「全くだ。俺としたことが…交渉に気をとられていたなんてな」

 

「い、今のお前が、やったのか?」

 

リックがフェヴァに聞く。

 

「ああ、そうだ。

これで分かっただろう?いつ何処で襲われるか分からない。

個人で銃を所有する権利はある。それに…」

 

フェヴァは苦笑した。

 

「別にあんたのルールに従わないって言っていない。

銃は渡せないが、その代わり、あんたが言うルールに納得できる限り、従うつもりだ」

 

たっぷり沈黙が空間を支配した。

 

そしてリックは銃を下ろす。

 

「ケ。しょうがねぇガキだ。仕方ねぇ、持ってていいぜ」

 

納得していない風だったが、その返事を聞いてフェヴァもコォラも少し安堵した。

 

「じゃぁ、早速だが、テメェら二人でゾンビが隠れてないか見回って来い!」

 

「誰がお前の家来になるっつーたかな〜?あはは〜★」

 

「コォラ…。話を蒸し返すな。別にその程度なら構わないだろ?」

 

「俺も行こう。子供二人では何か合った時に対処できない」

 

モリスの申し出にコォラは思いっきりしかめっ面をした。

フェヴァにこっそりと不満を言う。

 

「俺のストレス発散が…」

 

「諦めろ。

行きましょうか?モリスさん、頼りにしてます」

 

「気をつけてね、皆…」

 

ルオンが心配そうに言う。コォラは辺りをキョロキョロ見回して、二人居ないことに気づく。

 

「なぁ、ルオン。あの妊婦さんは?怪我してた?」

 

「レイオンが付き添って行ったみたい。大丈夫かしら…」

 

コォラは「ふぅん」と呟きながら、フェヴァに呼ばれて見回りに向った。

 

 




 

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