コォラとフェヴァの戦闘記

【出会い編】

 

 


第四話ー決まっていた未来…ー






コォラが来て3年経った。

相変わらず、彼の出生は謎のままだったが、小間使いとして大いに役立ったので

住み込みの雑用係として

そして、子供達の兄弟の一人として、元気に暮らしていた。

 

「フェヴァ。もうじき春が来るな。俺が着て、三年目になるのか?」

 

呼びかけられ、振り返る。

目隠し用に置かれている高い塀に座ったコォラが見下ろして笑った。

 

「またそんなトコに上って…しかもその下は姉の花壇じゃないか。
怒られるぞ」

 

「踏んでねぇし、ばれなきゃ大丈夫だって」

 

言いながら、滑るように塀から降りて地面に両足で着地する。

黒い靴がすれて雑草から音が出る。

 

「それよりも、フェヴァ。遊ぼうぜ」

 

彼の態度は一番上の兄に習ったらしく、とてもよく似ていた。

言葉遣いは二番目の兄に似ており、やや口調が荒かった。

 

「いや。遠慮しとく。今から出かける用事あるし」

 

コォラがきょとんとした。

 

「町に何しに行くんだ?」

 

「教科書買いに…買ってもらっても良いんだけど、自分で買いに行きたい
って思って…。それで、町まで連れてってくれるらしいから、待ってる」

 

「あ?あ、そっか……」

 

不思議そうな視線を向けていたが、すぐにコォラは思い出したように呟いた。

そして楽しそうに笑う。

 

「フェヴァはもうすぐ学院に行くんだよな。この…二ヵ月後だっけ?」

 

「うん。その通り…。家から遠いから、送り迎えするらしい。
朝が早くなってちょっと困るな。

僕としては、学院の寮に入っておく方が楽かもって思ったんだけど…」

 

一瞬、コォラが寂しそうな表情を浮かべた。

しかしすぐ元に戻って、笑みを浮かべる。

 

「フェヴァは一番遅く起きるからなぁ」

 

「寝るのが好きなんだよ」

 

言いながらしばらく歩く。

庭園を散歩して、それからフェヴァはコォラに向き直った。

少し迷ったが、やや気だるそうに首を振った後、言った。

 

「…コォラも、僕と殆ど同い年だよな?
もし学院に行きたいんなら、パパやママに頼んでみるけど…?

僕と同じ学院って訳にはいかないだろうけど…それでも…勉強とか将来必要になるものだし…
出世払いとか、そんな風に…すれば…」

 

「ありがとな。フェヴァ」

 

コォラは両手をポケットに入れて、ピョンっと花壇を越えた。

 

「俺の事いっつも気にしてくれて…
でも、そこまで甘えるわけにはいかないって分かってる」

 

「コォラ…甘えとか、そんなんじゃない。
だって、コォラは…」

 

「今、育ててもらって、凄く幸せなんだ。だってそうだろう?
お前に見つけてもらって、こうやって不自由なく暮らしている。

本当なら、有り得ないんだ。
だって俺は……本当は孤児だ。

親がいるんだろうけど、俺のこと、きっと必要ないって思ってる。

だから未だに、誰も探しに来ない…」

 

「コォラ」

 

「別に寂しくないぜ。
皆、俺を本当に可愛がってくれて…
俺も時々、家族になれてるって錯覚する時もある。
だけど違うんだ。
優しくされればされるほど、俺は何も返せないと思い知らされる。
飯とか、住む場所とか、服とか…凄く良くしてくれるのに
俺からは何も…返せない」

 

コォラは隣にあった花壇へジャンプした。

 

「だからさ。これ以上の事は望めない。
学院とか、確かに興味あるけど…俺はここでずっと働いていたい。
俺の力とか役立つって言ってくれるし、ここで奉仕して…」

 

「だったら尚更、学院へ行くべきだ」

 

凛とした声に、コォラが吃驚したように振り返った。

フェヴァがこちらに来ていた。

ワザワザ、コォラが通った道筋を辿った。

 

「奉仕したいとか、ほざくんなら。学術を身につけて上の位になれよ。
もし、パパとママが駄目だというんなら、僕が借金してコォラを行かせてやる」

 

フェヴァがコォラの正面に来た。

背丈は殆ど同じである。

 

「嬉しいんだけど…ってか、金持ちの発言だよなぁ〜」

 

「ああ、お前も知ってのとおり、金持ちだよ。親の金だけど…
だからこそ、言えるんだ。
コォラ。チャンスがあるんだ。いいや、無くても僕が作ってやる。
だから、一緒に勉強しよう。んで、一緒に働こう」

 

コォラは目を白黒させながら

 

「…め、滅茶苦茶だなぁ…フェヴァって
いつも冷静で泣き虫なのに…こういう時って強気だよなぁ」

 

飽きれた様に言って、今度は嬉しそうに笑った。

 

「じゃ、駄目元で言ってみるかな?
俺も学術を学んでみたいって…」

 

「よし!」

 

 

「フェヴァお坊ちゃまー!どこですかー!」

 

 

呼ばれて、フェヴァは「ここだよー!」と返事をして、石の通路に下りた。

スッとコォラに手を伸ばす。

 

「一緒に買い物来いよ。暇なんだろ?」

 

「車って苦手なんだけどなー」

 

コォラは少し嫌そうに言ったが、すぐにフェヴァの手をとり一緒に走り出した。

 

 

 

 

町は、平和だった。

 

もう少しで学院に向って、兄弟と同じように学び、生きていく為の術を身につける。

長男が居るので跡を継ぐことは出来ないが

脇に立って助ける事も出来る。

自分の道を見つけ、その道をしっかりと歩けるものだと

 

 

 

 

 

 

 

思っていた。

 

 

 

 

 

 







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