コォラとフェヴァの戦闘記

【出会い編】

 

 


第五話ーささいな異変…ー





 

 

「なぁ、知ってたか?フェヴァ」

 

コォラの様子がおかしくなり始めたのは、教科書を買うために町へ繰り出した後だった。

 

「俺、今まで外へ出たこと無かったから勘付かなかったけど」

 

帰ってから、彼はしばらく何かに怯えるように部屋に篭っていた。

 

「この町は…なんであんな変なのが徘徊しているんだ?

 

食事にもやってこない彼を心配して、部屋を訪ねたところ

ベットの上に座り、布団に包まって、全てを拒絶しているような姿があった。

 

「コォラ?」

 

近づくと、彼は怯えきった目をしてこちらを見た。

始めてみる表情に、一瞬言葉を失った。

 

「どうした?」

 

「…フェヴァっっ」

 

コォラはぎゅっと抱きついてきた。それはいつものことだが…

いつもと違った。体が冷え切ったように冷たく、震えていた。

 

「どうしたんだ?寒いのか?」

 

「違う。違う。違う……怖い、怖い、怖い」

 

「怖い?」

 

「何か、を忘れている事実が怖い。

何か、自分にとって大切な事を忘れているようなんだ。

あいつらを見て忘れている感覚を思い出した」

 

「感覚…?記憶じゃなくて?ってか、あいつらって…?」

 

「分からない。分からないけど…判るんだ。

愉しむ前の、あの嫌な雰囲気が満ちている。

…あいつらは…もう来る……。

下調べを終えると同時に…町が…ここが…」

 

「コォラ?」

 

コォラはフェヴァにしがみつく様に手の力を強めた。
フェヴァが痛みで少し呻く。

 

「いてっ」

 

「フェヴァ!頼む!しばらく外に出ないでくれ!!」

 

「外に出ないでって…来週から学院行くんだろ?コォラも…」

 

コォラはハっとして、少し黙り、それから少しだけ笑った。

 

「じゃぁ、一週間。その間だけ、家から出ないでくれよ。

出来たら、兄貴達にも、学校へ行く以外は外出控えるように、言っといてくれ」

 

「?…ああ、分かった」

 

フェヴァが同意すると、コォラはすっと彼から離れ、何事も無かったかのように立ち上がった。

 

「あー、腹減った。フェヴァ。飯に呼んでくれたんだろ?

さっさと行こうぜ」

 

「あ、ああ。そうだな」

 

怯えていた姿が嘘のようになくなり、飄々と歩くコォラの後姿を見て、

フェヴァは言葉に出来ないほどの不安を感じた。

だからこそ、言わずにおれなかった。

 

「コォラ。あのさ…」

 

「ん?なんだ?」

 

「僕と一緒に、学院行くんだよな?来週から、毎日…」

 

コォラは力いっぱい頷いて「当たり前だろ」と笑った。

 

 

 

 

 

 

その日の夜から、コォラの姿が消えた。

 

 

 

 

 







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