コォラとフェヴァの戦闘記

【出会い編】

 

 


第七話ー突然のー



 

 

ガチャーン!!

 

 

 

深夜に突然の破壊音が響き渡った。

 

「!!」

 

パッと目を覚ます。

連続で聞こえる破壊音に合わせて、ビクっと体を振るわせた。

 

 

ガチャーン!!ガチャーン!!ガチャーン!!

 

 

激しい破壊音は下の階から聞こえてくるようだ。

ただ事ではない。

そして、同じフロアの別の位置からも破壊音が聞こえてくる。

どんどん近づいてくる。

 

ここは危ない

 

急いでベットから抜け出ると、逃げるためにドアへ向った。

考える暇すらもないほど、本能的な逃避行動だった。

 

 

ドガガガガガガガ!!

ガコッ

 

 

瞬発的に部屋から出ると同時に、隣の部屋のドアが勢い良く弾いて、兄が出てきた。

いや、兄の姿をした肉が、ドアを壊した、と言ったほうが良さそうだ。

なんせ、兄だとわかる顔があるだけで、胸から下が引きちぎられて人ではなかったからだ。

壊れたドアの中に、何か居る。

フェヴァは悲鳴をあげより先に、転がるように下の階へ下りた。

 

それは功を成した。

 

それはフェヴァを追わず、同じ階に居た人間を襲った。

後ろで女の声や男の絶叫がしてすぐ声が途切れる。

使用人が数人、死んだようだ。

 

 

 

下の階に下りていくと、父と母が居た。

まだ生きていた。

使用人達が銃を取り出し、それに向って発砲していた。

相手は、どう表現していいか分からない『人間』だった。

黄色と褐色が合わさった、まだら模様。

人くらいの大きさだが、腕の方が長く、足がやや短い。

顔のつくりは似ているが、口が顎関節くらいまで切れて、鮮血を滴らせている。

血の主は、それの足元に転がっている使用人のものだ。

 

目の前で、人が食われている

 

 

「クソ!何故だ!?こいつらはここを襲わないんじゃなかったのか!?」

 

「研究結果ではそうでした…が、どうやら異常種のようです。

我々が育てていたセル・ステルス実験の『種』ではない。

製品を組み替える後に、どうやら遺伝的に変異を伴ったようです

 

「冷静に分析するんじゃない!!どうすればいい!!

私らはあれを監視するだけでよかったんじゃないのか!?

町を巨大な実験場にするなんて、聞いてなかったぞ!!」

 

素早く動く獣が、使用人を一気に三人、仕留めた。

鉤爪になっている掌は振るだけで人間を切り裂いた。

 

「ええ、当初ではそうでした。ですが、あれが途中で逃げ出したので

その後、敵とどのように戦えるかサンプルを取るための計画が急遽、進んだのです。

あれの本能を見極めるために…。

町での戦闘は、それはもう、見事でした。あれなら、我が国の役に立つ」

 

「なにが見事だ!全部倒しきれていないじゃないか!!

息子は!?娘は!?どうなっているんだ!!」

 

父の傍に回り込もうとした獣を、軍人が阻む。

しかし、爪が容赦なく軍人の腕を引っかいた。

致命傷にはなっていないが、血が溢れている。

 

「どうやら、キメラはここを『あれ』の巣だと認識し、

報復のつもりで襲っているようです。

一刻も早くここから逃げ出さないと全員殺されます」

 

「だから!子供達は!?」

 

「落ち着いて。もう無駄です。上からも悲鳴が聞こえます、絶望的です。

我々の想像よりはるかに、これは手ごわい。

気の毒ですが、貴方方を守るだけで精一杯です」

 

そして、軍人が皮肉に笑った。

 

「もしくは、あれ…コォラ、という名前になったのでしたっけ?

彼は必ずここへ来ます。それまで生き延びれば、まだ助かるでしょう」

 

父の顔は怒りに震えていた。

 

「やはり!!許可するんじゃなかった!!

魔法だか宝玉だかなんだか分からない種から生まれた人間だなんて

そんな化け物の面倒を見るのではなかった!!

この町をどうしてくれる!家族をどうしてくれる!!」

 

 

 

「ぱ。ぱぱ…、いったい…それ、どういうこと…なの?」

 





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