コォラとフェヴァの戦闘記

【死人蘇り編8】








〜補充〜

 

 

下水道は思ったよりも明るかったが、パイプが張り巡らせているため、足場が悪かった。

フェヴァとコォラはほぼ先頭に近い位置にいるモリスの近くに居る。

出来る限り護るから、自分の傍にいろ

そういわれてしまったので、大人しくそれに従っている。

 

流石に、コォラも軽口は叩かない。

音でゾンビが寄ってくるのは証明済み。

なるべく音を出さないように心がけた。

 

モリスがまずゆっくりとマンホールの蓋を開けた。

そして、冷や汗を流しながらゆっくりと顔をだす。

ゾンビは散っており、ゆらゆらしていた。

日は傾き、うす曇になっていたが、見えないほどではない。

モリスはゆっくりと出る。そして周りをキョロキョロみながらリックが出てくる。

その次にコォラとフェヴァが軽い身のこなしで、出てきてすぐに姿勢を低くした。

ヴェンセンドが出てきて、全員揃ったところで

音を立てずに武器屋の中へ入る。

全員が出たところで、レーリューがゆっくりとマンホールの蓋を閉める。

 

カツン

 

小さな、ほんの小さな石のこすれる音。

その音でゾンビが一斉にそちらの方向へ向いた。

腐っている体とは思えないほど素早く首を動かし

死んでいるとは思えないほど目を輝かせて

武器屋を見た。

 

全員、中に入っていたのが、ある意味幸いだった。

 

「やっぱしなー」

 

コォラは刀を振って血を払った。

足元には脳天から血を流したジョイントが転がっている。

 

「刀って結構便利だろー?」

 

ヴぇンゼントににへらっと笑うと、彼は吃驚した面持ちで頷いた。

フェヴァは無言で持ってきたリュックに弾を詰めていく。

最初に詰めたのをコォラに渡して、次に自分のを詰める。

 

「おいおい。オレが持てる範囲超えてねぇかい?」

 

「知るか」

 

いいながら、今度は携帯している銃に弾薬を詰めていく。

ずっしりとした重さに満足しながら、周りを見渡した。

 

「明らかに空気が違ってしまったな」

 

「だな。まぁ、いつものようにやるさ」

 

「ああ、そうだな」

 

お互いの拳で軽く叩いて、二人はモリス達を見た。

思い思いに弾薬をつめ、ルゥフェーと愛犬も回収。

全ての準備が整って、ここから脱出することにした。

 

「じゃ、いくぞ」

 

リックが重々しく言って、穴から這い出た。

その音に一斉にゾンビがこちらに振り向く。

そして

 

「着たぞ!急げ!!」

 

一斉にやってきた。

リックはすぐにマンホールに合図を送り、開けさせる。

 

「こっちだ!早く入れ!」

 

まずはルゥフェーが入った。

そして、コォラとフェヴァを先に行かせようとしたヴェンゼントを転がすように

マンホールに突っ込ませる。

 

「コォラ!」

 

「おう!」

 

フェヴァが呼びかけながらマンホールにジャンプして、手すりを使わずに降りた。

その次にコォラも飛び降りる。

 

「お前達、先に行け!」

 

レーリューが急かしたが、コォラは梯子を伝って降りてくるリックの足を掴んだ。

 

「こ、小僧!何を!」

 

「手ぇ離せ!こっちの方が早い」

 

「ぅわ!?」

 

抵抗する間もなく、リックは引き摺り下ろされる

…が、フェヴァが受け止めたので怪我はしていない。

 

「モリス!お前も手ぇ離せ!」

 

コォラは先ほどと同様にモリスを引き摺り下ろした。

 

「こ、コォラ?」

 

「こうしなきゃ、多分噛まれるしさ〜」

 

モリスをマンホール下から遠ざけると、すぐにゾンビが一体頭から落ちてきた。

 

パーン!

 

間髪いれず、フェヴァが打ち抜く。

だが、ゾンビは後から後から振ってきそうだ。

入り口に引っかかっていたりする…

 

「走れ!!」

 

リックが鋭く叫ぶと、全員走り出した。

 

「これなら全員助かるな」

 

フェヴァが安堵したように呟いた。

 

「そーだなー。あとはハリストがちゃんとしてくれれば…って話だけど」

 

 

「は!?ハリストだと!?

なんてことだ・・・

コォラ!お前!先に行け!」

 

フェヴァが鋭く叫んだ。

 

「は?なんで?」

 

「あいつ、一人で逃げる可能性高いだろう!」

 

「ああ、なるほど。

臆病風に吹かれて、仲間を全員見殺しにするってやつか。

ドアを開けないか、最悪ドアの前にすらいねぇって考えね」

 

「ああ…って、お前、気づいていたのか!?」

 

「うん★」

 

馬鹿かーーーーーーっ!!

なんで放っておいたんだコォラ!」

 

「え?だって。オレの刀でドアくらい切り倒せるもん★

 

「もん★じゃねぇよ!

それがオレの危惧してる部分だよ!

切り倒したらオレらもだが、ゾンビもらくらく入ってくるだろうが!!」

 

「そしたらハリストノ所為★」

 

「十中八九!お前の責任だーーーっ!」

 

「ど、どうした!?」

 

モリスが慌てたように後方から声をかけてきた。

 

「いやいや、なんでもない

ちょっとフェヴァに発作が…

 

バキューン!!

 

コォラの頭にぶち込みたい弾丸を、リックの後方にいたゾンビ三体に放つ。

 

「オレは発作持ちかよ」

 

階段を上がると、先に到着していたはずのルゥフェーとヴェンセンドが

防火扉を必死で叩いていた。

 

読みがピタリと的中したらしい。

 

「どうした!?」

 

「ドアが開かないの!?」

 

「くそ!ハリストめ!」

 

ドンドンドン!

 

「開けてーー!」

 

「くそ!ゾンビが近づいてくる!」

 

リックが慌てると、フェヴァは無言で階段の下へ向う。

 

「おい!小僧!」

 

ジャギっと銃を二つ持つと、フェヴァはリックを通り越してコォラに呼びかけた。

 

「終わりだ。コォラ。・・・・・・観念した」

 

「ちょ!?諦めるの!?

嫌よ!嫌―――!」

 

「誰か!ここを開けてくれ!!」

 

「ほらな。オレがやるほうがまだいいだろ?」

 

コォラはにやりと笑って、刀を構えた。

フェヴァは下の階からやってくるゾンビを一瞥し、撃ち始める。

 

「この量じゃ、もって3分、ってとこだ。急げよ」

 

「アイアイサー」

 

コォラは刀を振ろうとして

 

ガチャ

 

寸前でやめた。

 

「…なに?」

 

ひょっこり顔を出したルオンを押しのけるように、全員が中へ飛び込む。

 

「ど、どうしたの!?」

 

「どうしたのじゃねぇ!ハリストのやろう。俺らを見捨てようとしたんだ!」

 

「兎に角逃げろ!ゾンビが来るぞ!」

 

「ちょっと!あの銃声は!?」

 

コォラがドアから動かずに、顔だけひょっこり出した。

 

「フェヴァだ。先に行っていいぜ。オレはあいつ引っ張ってくるからさ」

 

すぐに顔を引っ込めた。

 

「ちょ!?待ちなさい」

 

「早くこっちへ!」

 

ヴェンゼントにひっぱられ、ルオンは全力で駐車場へ走り出した。

 

 

 

 

全員がその場から駆け出した丁度その時

コォラはフェヴァを力任せに引きずるようにして階段を上り、防火ドアから中へ入った。

休む間もなくある場所へ走る。

 

「ああ、やっぱりこーなった」

 

フェヴァが後方を見ずにトリガーを引く。

狂いなく、ゾンビの頭に打ち込まれる。

弾に当たらず近づいたゾンビは、洩れなくコォらの刀の餌食になった。

 

「だなー。後半日だってゆーのにさー」

 

「ああ、勿体無いな」

 

全速力のゾンビが追いかけても、二人には追いつけない。

着実に頭数が減っていくが、二人はここで全滅させる気は全くなかった。

 

「まぁ、お約束…ってやつ?」

 

下ろしておいたシャッターをいくつかくぐって鍵をかけ

屋上へ続く階段の最上階以外は全て防火ドアで侵入不可能にした。

 

そこまでして、ちょっと一息ついて屋上から外を見た。

 

 

 

 




 

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